Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

イラン旅行(4)2016.2.22 砂漠都市ヤズド、イスファハーンへ

2016/2/22

AM ヤズド観光

13:00 ヤズド・バスターミナル発、バスでイスファハーンへ

19:00 イスファハーン

アッバースィーホテル泊

 

本日は午前中にヤズドの旧市街を観光し、午後はバスでイスファハーンに移動する、ややあわただしい日程である。ヤズドの旧市街はマレク・オットジャールから通りを挟んで向かい側に広がっており、バザールと連続している。まずは市内のどこからでも目立って見えるミナレットを備えた建築、アミール・チャグマーグのタキーイェに向かう。

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アミール・チャグマーグのタキーイェ

タキーイェというのは寺院やバザールなどの複合施設で、ミナレットに挟まれた通路沿いにちょっとしたバザールがある。しかし朝早いからだろう、閉じている店が多い。広場の右には謎の木造構造物が鎮座しているが、これはナフルといって8代目イマーム、ホセインのシンボルであるらしい。大きな広場には噴水や植え込みがあったようだが、絶賛工事中で掘り返されていた。写真を撮り忘れてしまったが、この建築物の柱と柱の間に道路が敷かれており、なかなか不思議な感じがする。

いったんメインストリートを戻り、バザールを抜けて旧市街へ向かう。少し時間がたったのでそろそろ開店している店が増えてもいいはずだが、シャッターが下りている店が目立ち、やや寂れている感じがする。バザールを抜けると、左手にマスジェデ・ジャーメが見えた。このモスクのミナレットはイランでもっとも高いのだという。正面入り口のエイヴァーンは深みのある青緑のタイルで装飾されており、重厚感のある雰囲気だ。中に黒ずくめの女性がたくさんいて近づきがたい雰囲気だったので、のちほど再度観光することにして、旧市街の中心部へ向かう。

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マスジェデ・ジャーメのミナレット

このあたりで再び女子小学生の集団に出会う。彼らは外国人観光客とわかるととても嬉しそうに手を振ってくれ、こちらも嬉しくなる。この旅行ではイスファハーンなどの観光地で多くの学生集団に出会ったが、決まって外国人観光客とわかると笑顔で手を振ってくれる。しかも作った笑顔ではなくとても嬉しそうなのである。彼らの笑顔を見るたびに、異質な人に自然に笑顔を向けられるような社会は素敵だなあと思うし、「見知らぬ人についていかないようにしなさい」と徹底的に教えられ、外国人を見れば眉を顰める(欧米人には尻尾を振るが)日本人とは対照的だなと思わされる。

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嬉しそうに手を振る小学生たち

閑話休題

バザールを通り抜けると迷路のような旧市街に至る。広場からはレンガ造りのバードキールが多数認められ、独特の景観を呈している。これはカナート内の熱をここから逃がすための設備で、「天然の冷房」なのだという。砂漠で生きる人々の知恵が垣間見える。天井まで土で塗り固められた通路が迷路状に張り巡らされているところもある。これも日差しが強いこの地ならではのものだろう。町はとても閑静であるが生活の香りがしてなんだかほっとする。旧市街の一角では兄弟がサッカーを楽しんでいた。

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地下の貯水池とバードキール

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迷路のような旧市街。閑静で雰囲気が良い

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広場でサッカーを楽しむ兄弟

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旧市街の一角にて

途中にアレキサンダー大王が建てたというアレキサンダーの牢獄という観光スポットがあるが、正直なかなか綺麗でとても紀元前の建築には見えない。

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アレキサンダーの牢獄なる建物

別の道を通ってマスジェデ・ジャーメをめざす。先ほどのような黒づくめの人(おそらく礼拝に来ていたのだろう)の集団はすでに去っていた。先ほど写真で紹介したエイヴァーンはメッカの方向を向いておらず、入ると左手にドームがある。すなわち動線は正門から90度折れ曲がっているという独特の構造である。ドームに至る回廊は天井が高く開放的かつ威厳があり、ドームの外観も内装もほかのモスクではあまり見ないような独特の装飾が施されていてとても美しい。

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マスジェデ・ジャーメ

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ドームへの入口。装飾が美しい

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天井の装飾も独特

バーザールを見て回ってはみたものの、シーラーズのバーザールと比較すると規模も質もやや劣る。特にミーナ・カーリーや絨毯などのお土産品はほとんど売っておらず、生活感が強い。というかそれ以前に先述の通り閉店している店が多く少し物寂しい雰囲気だ。買い物を楽しみたいならイスファハーンかシーラーズがよいかもしれない。両替はAmin exchangeという両替所で行ったが、100ドル340万リヤルと、そこそこのレートだった。なお、道を歩いている途中で、女二人組に「チーニー(中国人)」と後ろ指をさされた。この国でも残念ながらお隣の大国の印象はあまりよくないらしい。

午後はホテルに預けていた荷物を回収してバスターミナルへ移動し、いよいよ世界史にも名をとどろかせる観光地、イスファハーンへの移動になる。今回のバス会社は、Hamasafarというらしい。旅行会社から渡されたPDFチケットを印刷したものを持って乗り込むが、乗客の一人の女性が、近くのオフィスに行ってチケットに替えてこいという。ヤズドに向かうバスではそんな手続きなど必要なかったので、何かの間違いかなと思いスルーしたところ、バスのスタッフがチケットを確認しに来た。PDFを印刷したチケットを見せたところしばらく居なくなり、別のチケットを手にもって戻ってきた。どうやら先ほどの女性の言ったことは本当だったらしい。申し訳ないことをした。まあ、結果良ければすべてよし、ということで。

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ヤズドのバスターミナル

バスからの車窓は相変わらず単調であったのであまりよく覚えていないが、一度検問所を通過する際に「Police check.」といってバスを降ろされた。なお、イランの高速バスは軽食がついているのでとても快適である。

18時を過ぎたころにようやくイスファハーンに到着する。すでに日が没し薄暗い。バスターミナルでは定番のタクシー客引きがたむろしていたが、英語を話せるタクシードライバーが「どこまで行くか?」という。「アッバースィー・ホテル」と言うと、50ドルなどというとんでもない値段を吹っかけてきた。一応高級ホテルということになっているので、足元を見てきたわけである。大体こういう観光地で英語を流暢に話す奴はロクなことがない。顔もまるでキツネのようで、狡猾で性格が悪そうだ。申し訳ないが君のタクシーには乗れない。吹っかけずに正直な稼業をするタクシードライバーを応援したいんでね。近くの別のタクシードライバーにお願いし、アッバースィー・ホテルの名を出さずにホテル近くの広場、Meydan-e-Emam-Hussainまで行ってくれるようお願いする。16万リヤルであった。さっきのキツネ男はざっと10倍以上の値段を吹っかけてきたわけである。あまり吹っかけるとその国に対する観光客の印象が悪くなって自分たちの首を絞めるのでやめたほうがいいと思う。笑。

イスファハーンは夜だというのに町はネオンが輝き、ごった返している。イランというのは砂漠で昼間は暑いから人はあまり外に出ず、日が没するとまるで土から春の虫が這い出てくるかのように家から出てくるわけである。道はやや雑然としているが、もう夜であるにもかかわらず女性や子供が普通に歩いており、スリのような変な人がいる雰囲気ではない。そもそもヨーロッパの都会であれば外出がはばかられるような時間帯である。イランという国のイメージと内情の違いにはつくづく驚かされる。

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イスファハーン市街の夜の様子。人で混雑している。

青い大きなドームを持つモスクを過ぎると、ようやくアッバースィー・ホテルに到着した。イスファハーンの中でも有名な5つ星ホテルである。ぼったくりタクシードライバーのカモにされるわけである。受付のプライドの高そうな女性にバウチャーを渡すと、流暢な英語で「おたくの旅行会社はダブルベッドの部屋を予約したようですよ」と苦笑しており、ツインの部屋に替えてもらった。ホテルには大きな中庭があり、外観、内装ともにとても美しい。我々の部屋は増築された新しい部分にあり、あまりその重厚な雰囲気を味わえなかったのが残念だ。ホテルには内装の美しい(一部改装中だったが)レストランがついており、夕食はそこでいただくことにした。

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ホテルの中庭

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レストラン


ヤズドは派手さはない都市ではあるものの随所にイランの長い歴史の痕跡、特にゾロアスター教の遺産が色濃く残っていた。その町並みには砂漠を生き抜く知恵が随所にあふれていて、ローカルで味わいがあった。明日はいよいよ「世界の半分」を存分に体験することになるわけだ。