Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

ウズベキスタン(3)長い移動の日

11/1

8:00 ヒヴァ

14:30 ブハラ

Emir 泊

 

この日はキジル・クム砂漠を高速道路をひたすら車で走ること6時間。ブハラのブティックホテルであるEmirに宿泊するだけの日程である。

朝は少し早起きしてヒヴァの街を回ってみることにした。朝焼けに輝く砂糖菓子のような街並みが美しい。可能ならばもう1日滞在したかったところ。

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朝焼けに染まるヒヴァ

 

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朝焼けのパフラヴァン・マフムド廟



この日送迎してくれるのは、昨日ヒヴァの空港から市内まで送迎してくれたのと同じ運転手であった。朝8時頃に城壁の外で待ち合わせ、彼の車に乗る。UcellのSIMカードを購入したメリットを最大限に活かし、Google Mapと睨めっこしながら外の景色と照らし合わせる。

ヒヴァ周辺の延々と広がる綿花の畑もやがて終わりを迎える。ホラズム地方には何個か小さな都市があり、そこではモスクや道端で瓜の類を売る光景が見られる。とてもローカルな光景だ。トゥルトクリという名前の都市を過ぎると風景は一気に砂漠になる。

 

単調な景色で、ブハラについた後はまたウルゲンチまで戻るというドライバーが哀れである。トルクメニスタンとの国境地帯は多くの場所で写真撮影禁止だが、一部でアムダリヤ川が望めるところがあり、ここで写真を撮ってもらった。

このアムダリヤ川は何度か流れが変わり、それに伴ってウルゲンチの町も移動したのだという。過去のアムダリヤ川の流れの近くに沿って作られた都市がトルクメニスタン世界遺産になっている、クフナ・ウルゲンチである。

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アムダリヤ川の流れ

この撮影ポイントを過ぎてしばらく行くとドライブインに至る。ここでは高速バスが何台も止まって団体旅行客が休んでいる。私はガイドに連れられ、シャシリクとスープを注文した。なかなか美味。残念ながら自分の注文分は自分で払わされたが、彼の帰りのドライブを考えると仕方がない、ここは我慢することにした。

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ドライブインで食事。スープもシャシリクも美味

しばらく単調な砂漠を行く。

本当に単調かつ広大な砂漠である。一部に未舗装路もあり路面状況は良くない。ようやく道が舗装されてきて2車線になり、次第に緑が増えてくる。心なしか雲も増えてきたようだ。ようやく人々の生活の香りがしてきて、ヒヴァの市街に至る。

ヒヴァはロシア人が旧市街を破壊することなく、その外側に新市街を形成したため、中心部の旧市街がきれいに形を留めている。数多くのモスクやマドラサもそのままの形で残っている。市街の隅のユダヤ人街もきれいに残っており、2日間お世話になるEmirもこのユダヤ人街の中にあって、かつてのユダヤ商人の屋敷を改装したものだという。このブティックホテル、元々は一階の部屋が予約されていたが、無理言って二階の部屋にしてもらった。中庭と建物の装飾がおしゃれだ。少し休憩したあと、夕食をとりがてら夕方の街を散歩してみることにした。

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ブティックホテルEmir。白を基調とした、おしゃれでかわいい内装

ブハラの町はイスラーム圏の街の構造としては典型的な感じもするが、〇〇ハウズ(リャビ・ハウズやボラ・ハウズ)という池が作られており、市民の憩いの場となっているのが特徴だ。

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ナディール・ディヴァンベギ・マドラサとリャビ・ハウズ。とても雰囲気の良いところ。

このナディール・ディヴァンベギ・マドラサというのがブハラのの名物的建築のひとつである。モスクのエイヴァーンには人の顔と、二羽の大きな鳥が描かれている。本来イスラームでは偶像崇拝はタブーであるはずだが、これは本来ナディールがキャラバンサライとして建て始めたのをハンが「素晴らしいメドレセ」と称賛したため急遽マドラサにした名残らしい。この顔はハンの威光を示すらしいが…なんだか極めてモンゴロイド的な顔貌で笑ってしまう。まあ自分もモンゴロイドだが。笑。

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ナディール・ディヴァンベギ・マドラサ

このマドラサは現在はバザールになっており、市民の憩いの場となっているほか、この建物をバックに記念撮影する新郎新婦が多く見られる。個人的にブハラ観光の目玉だと思っていたこの世界遺産級の建築が、あまりにも市街のど真ん中にある上に人々の生活に馴染んで親しまれていることに少し感動した。このマドラサマドラサとしては死んでいるが、建築としてはまさに「生きている」わけである。ただの観光地と化した世界遺産もある一方で、こういう人々の生活に馴染んで未だその役割を果たしている世界遺産を見るとなんだか嬉しくなる。

夕食はリャビ・ハウズ近くの同名のレストランで。雨が少ないからだろう、屋外に机が並べられている。麺入りの肉のスープを注文。夕食には少し少ないかもしれないが、昼間に十分食べたのでこれで大丈夫。

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夕食

食事後はブハラの街散歩。とても活気があり、歩くのが楽しい。スザニや金属加工品、木彫りなどの手工芸品を売る店が立ち並ぶさまは整然としていてとても美しい。こんな時間であるが町の治安はよく、ヨーロッパの街にありがちな(以下略。

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夜のバザールの様子と、ライトアップされるカラーン・ミナレット

少し足を伸ばしてカラーンミナレットやモスクの立ち並ぶ界隈へ行く。 夜も観光客が街を歩いており、治安の良さが窺われる。カラーンミナレットはチンギスハンの襲来時にも破壊されなかった数少ない建築物の一つ。レンガの凹凸で美しさを表現しており立派な建築だ。カラーン・モスクは夕暮れ時の紫色と照明の緑色が混じり合い、独特の雰囲気を呈している。向かい側にあるミリ・アラブ・マドラサは現役のマドラサで、観光客の立ち入りはできない。

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黄昏時のカラーンモスクとミリ・アラブ・マドラサ


この辺りで夜散歩は切り上げ、ホテルに戻る。ホテルの内装はローカルでとてもおしゃれな雰囲気。こういうところに宿泊するのはとても贅沢だと思うし、宿泊というのは滞在の中で最も長い時間を占めるもの。時間をかけて下調べし、自分の良いと思ったところに泊まるのが一番である。

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Emirの客室の装飾。とてもおしゃれ