Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

メキシコ(5) 魔法の村クエツァラン

2/22

終日クエツァラン観光

Cascada las Brisas

Xoxoctic Jardin Botanico

Yohualichan

 

Posada la Plazuela泊

 

本日はクエツァランを拠点に、Cascada las Brisasという滝、Xoxoctic植物園、そしてエル・タヒンに類似した意匠を持つYohualichan遺跡へのエクスカーションとする。

Cascada las BrisasやYohualichan遺跡に関しては数少ないクエツァランに関するWeb上の日本語ページで得ることができたが、Xoxoctic植物園に関してはまるで写真集のような英語のWebページで発見した。Lonely Planetにも書かれており、それなりの観光名所として訪れる価値があるかもしれない。時間もあるので、足を伸ばしてみることにした。

 

本日は朝7時ごろにゆっくり起きた。この宿、Posada la Plazuelaは、かつては最上階のレストランから美しい景色を望めるので評判であったようだが、残念ながらレストランの方は臨時休業してしまっているようで、この宿泊には食事がついていない。宿の上の階に行くと、ガラス張のホールの中に使わなくなった机椅子が置かれていた。屋上からの景色を見ようと思ったが、屋上への階段は残念ながら椅子で塞がれていた。ちょうど日の出の時間で朝焼けが大変美しい。

 

さて、一旦宿に戻る。朝番は昨日のふくよかな女性ではなく地元の青年であった。英語はほぼ通じないが誠実な人であったので、Cascada las BrisasとYohualichanへのコレクティーボが出ているバス停を聞き出した。Cascada las Brisasへのコレクティーボのバス停はGoogle  MapでTerminal Transportes Tziculianという、町の北東の外れにある。YohualichanやXoxoctic植物園はいずれも同じルート上にあり、同じところからコレクティーボが出ている。こちらは場所が少し分かりにくいが、町の北北西にあるHotel Parador JLから少し通りを西に行ったところにある。Huantiknemi(ナワトル語で我々の手/運転手という意味らしい、と地元の青年に教わった)というのが目印らしい。いまいちよくわからないが、こういうのはとりあえず行ってみるのが大事だ。

朝の森林浴というのは気持ちが良いなあと思い、まずはCascada las Brisasにいくことにした。ちょっとした広場に大きなワゴン車が止まっていた。近くにいるオッサンたちにとりあえず話しかけてみる。「Cascada las Brisas?」というと「どこから来たのか?」とスペイン語で尋ねられたので「Japon!」というとゲンコツを合わせるような仕草をしてきたのでこちらも応じる。これがこの国の挨拶らしい。上機嫌でドライバーに行き先を伝えてくれ、ワゴンの助手席に乗せてくれた。

ここがCascada las Brisas方面へのコレクティーボが出発するバス停。
昨日のうちに下見しておいた

人が集まってくると、コレクティーボは出発。路面の荒れた曲がりくねった道を行く。途中のCascada las Brisasの入口というところで降ろされた。8ペソなり。電波が途中でなくなってしまったので大変不安である。指された方を進んでいくと、ちょっとした広場に出た。そこにある売店の人と思われるおばあさんが掃除をしていてちょうど良かったので、「Cascada las Brisas?」と方向を聞くと、青いビニールシートがかかった右手の方を指差した。しかしながら左手にあるあまり整備されていない道の「Cascada las Golondrinasの方が大きいですよ!」という。店に入って少し話をしてみた(もちろん英語は×)。店のおじさんにCascada las Golondrinasの動画を見せてもらった。斜めな岩の隙間を勢いよく流れる大きな滝らしい。しかしながら電波が入らず、現在地もわからないところで道に迷うと完全終了なので、今回は情報のあるCascada las Brisasに行ってみることにした。

Cascada las Brisasへの道は一応舗装されている。昼には売店が並ぶと思しき白いビニールシートが並んでいるが、一部は倒れて歩きにくくなっていた。

坂を下っていく。ヘゴやバナナなど、熱帯雨林のようなしっとりした植生と朝の空気、鳥の囀りが心地よい。

Cascada las Brisasへ向かう道は、しっとりした植生が美しい

しばらく歩くと入場料について案内する板があるが、誰も人がいない。そのまま入ろうとすると2匹の犬が吠えかかってきた。おそらく番犬なのだろう。人が出てきてくれれば良いのだがそうではなかったので、そのまま入ってしまった。門番の方、ごめんなさい!

Cascada las Brisasの入口

Cascada las Brisasaは岩を穿って流れ落ちる形の良い滝で、広い滝壺を持っている。かなりの大きさを誇るが、写真だとどうも大きさが伝わらなくもどかしい。

美しい滝壺をもつCascada las Brisas

しばらく写真を撮ったりして滝を満喫したのち、元来た道を戻る。昼に店を出していると思われる人々が少しずつやってきており、崩れたビニールシートを元に戻していた。山で薪拾いをしている地元のお婆さんにも出会った。ここの人々は皆、自然に寄り添った生活をしているのだろう。

さて、先ほどの広場から元の道を戻り(迷わないように道の写真を撮っておいた)、5分ほど待つとちゃんとコレクティーボがやってきた。行きと同じドライバーである。正直このまま置いていかれるのではと少し不安だった。笑。

元来た道を戻り、先ほどのバス停に辿り着く。料金はやはり8ペソなり。少し汗をかいたので10分ほど休み9時ごろになったので朝食とすることにした。朝食は、結局宿の近所にあるYoloxochitlというレストランで取ることにした。

こちらのレストランはサンフランシスコ教会のある広場に面しており、開放的な雰囲気。いかにも先住民風のスタイルは良いがそっけない女の子が店番をしていた。メニューがスペイン語でよくわからないのだが、Googleの画像翻訳の精度がネット上の下馬評よりもはるかによく、メニュー画像をかざすだけで大体の内容がわかった。せっかくなのでクエツァラン名物と書かれた95ペソの料理を頼むことにした。

この料理はタコス的なものと豆のソース、豚肉の炒め物にキノコが添えられている。大変美味という感じではないが値段と味のバランスは悪くない。それ以上に朝8時から開いているのが非常にありがたい。

本日の朝食

チップの基準が私にはよくわからないのだが、とりあえずお釣りのコインを残しておいた。(チップというのは難しい。これに関しては後日の記事で話題にしようと思う。)

宿に戻り、すこしゆっくりしたのちYohualichan方面へのコレクティーボのバス停に向かう。

写真を撮り忘れてしまったのだが、Yohualichanや植物園方面のバス停は先ほどよりわかりやすい。道に面したところに大きな倉庫のような建物があり、ここにコレクティーボが並んでいる。値段を聞くとYohualichanまで22ペソだというが、20分してから発車するという。植物園を経由して別のところに行くコレクティーボはすぐに発車するらしいので、とりあえずそちらに乗ってみることにした。

尾根伝いの景色の良い山道をコレクティーボは下っていく。時折大きな山の斜面に広がる小さなクエツァランの町並みがみえた。標高が下がるにつれ気温と湿度が上がっていくのがわかる。Xoxoctic植物園で降車。8ペソなり。

こちらの植物園、入口はよく手入れされた美しい木々で彩られている。自然の美しさを生かすような形で適度に手が入っているのがわかり、その匙加減が素晴らしい。

美しい植物に彩られたXoxoctic植物園

受付で聞いてみると(英語×。Google翻訳経由で話した)、スペイン語ガイド料込みで60ペソだという。一人で好き放題歩いて回るタイプの植物園ではないらしい。正直高いような気もしたし、スペイン語でガイドされて何いっているかわからないのにお金をかけたくもなかったけど、ここまで来て帰るのもアホくさいので60ペソ払うことにした。

10分ほど待つと、植物園のガイドがやってきた。植物の名前はさっぱりわからないけれども、見どころを指さして教えてくれる。着生植物やランなど、みていて大変面白いし勉強になる。ランがヘゴなどの木の幹に着生して咲いている様子はまるで展示品のようで美しかった。一人で歩くと気づかないような部分も、ガイドがいればよくわかるものだ。たとえそれがスペイン語であっても…

ランなどの美しい植物から、地味な着生植物まで展示には事欠かない

ヘゴの幹に着生するランの花

コーヒーを煎る機械や、黒い蟻もしくは蜂のような虫が飼育されておりなかなか楽しい。この黒い蜂のような生き物はまるでディズニーランドのスプラッシュマウンテンで上っていくところにあるハチの描写そのもののような虫柱を形成していて、大変面白かった。ただこれに突入すると体にまとわりついてきて大変鬱陶しかった。

植物園からは時折、クエツァランの町並みが小さく見える。

植物園からクエツァラン市街が見えた

入口近くに戻ると、ガイドのお爺さんが道から外れたところに何やら面白いものがあるという雰囲気で案内してくれた。ピイ、ピイと鳥の鳴き声がする。指された方をみると、葉の上にドングリの傘のような小さな鳥の巣があり、その中にヒナが収まっている様子で、時折ピイ、ピイと鳴いている。大変可愛らしかった。

最初は不安であったが、言葉や植物名は理解できなくても大変興味深く、周囲の植物に対する解像度が上がった。美しくて良い植物園だった。植物などの自然が好きな人には、ぜひお勧めしたい。

さて、植物園を出たところでコレクティーボを待つ。

行き先の違う何台かのコレクティーボを見送り、ようやくヨウアリチャン行きのコレクティーボに乗った。こちらはトラックの荷台部分が人が乗るように改造されている。途中で道は再び石畳になり、車の速度が落ちる。ワインディングロードがようやく落ち着いて、ヨウアリチャン遺跡前の小さな教会で降りた。植物園からここまで、12ペソ。

コレクティーボの風景。老年男性のまとう白い服はトトナカ族の民族衣装

教会の横を通って、ヨウアリチャン遺跡へ。70ペソの入場料を払うのだけど、そのチケットに印刷されているのがウシュマル遺跡の写真で手抜きを感じた。笑。

ヨウアリチャン

遺跡を歩いていくと、まずは球技場にでる。球技場を見るのは実は初めてであるが、奥行きがあり、真ん中には道路に書いてあるような菱形の模様が石で残されている。

球技場の奥に崩れかけたピラミッドが見える

球技場を抜け、崩れたピラミッドの横を回り込むと、大きなピラミッドが5個ほど並んだ、大きな広場に出た。これらのピラミッドはいずれも、ベラクルス州の平原にあるエル・タヒンと同じ意匠である、壁龕(四角い凹み)をもつ。遺跡はそれほど本格的な修復がされていないからか、ピラミッドの一部が崩れたり歪んだりして、生えているシダ植物がいい味を出していた。しかしながらこの広場には陽射しを遮るものがない。高度計は560m程度を指しており、クエツァランから400m程度降りてきたことになるが、温度・湿度は桁違いであり、汗が噴き出てきて熱中症になりそうだ。

遺跡横には小さな教会がある

一通り遺跡を回ったのち、帰途につくことにした。バス停の場所を聞くとよくわからないお爺さんが絡んできて、言葉がわからないので物乞いかと思いスルーしてしまった。周囲には何件か商店があり、民族衣装を着た人が出店を出している。しばらくすると、コレクティーボが来た。

 

先ほどの山道を20分ほど戻って、クエツァランに戻る。22ペソと聞いていたが、結局12ペソだった。朝ごはんをしっかり食べたので、昼は抜いて宿で休むことにした。途中宿の隣の売店で水とジュースを購入。1Lの水が15ペソ、炭酸入りのライムジュースが20ペソ程度であった。宿はちょうど「Hotel Restaurant Posada la Plazuela」という看板を「Posada la Plazuela」というレストラン表記のないものに置き換えている途中だった。

 

Cuetzalanで検索すると、山の斜面にカテドラルが映える美しい写真が何枚か上がっている。午後は少し時間があったので、一番暑い時間帯の2時をこえたあたりでちょうどベッドメイキングが来たので、部屋を出て散策することにした。おそらくYohualichanへのコレクティーボが通る道の近くのどこかしらから、あの景色が望めるはず。そう思い、数キロほど散策してみることにした。

Google Mapを手にコレクティーボの走っていた道を辿る。575と合流するあたりで、丘の上にちょっとした宿、Cabañas Belkyがあるのを見つけた。この辺りから、あの写真が撮れるのだろうか?怪しまれたら説明すればいい。行ってみることにした。

この宿はちょっとしたプールがあり、入口前のテラスでバーベキューをやっていた。クエツァランの美しい佇まいがテラスから望める。怪しまれる前に説明を、とのことで、「こんにちは、町の景色の写真を撮りに来ました」と(Google翻訳で)説明すると、宿のおばさんが「いくらでも写真を撮っていいわよ!」とのことで、たくさん写真を撮った。

美しいが、雨季ではないのでどこか乾いた景色

元来た石畳の道を戻り、宿へ。

本日の夕食は、ネットで評価の高かったTAOLというお店。Yoloxochitlの程近くにあり、大変可愛らしい盛り付けの料理が特徴で評判らしい。店は趣のある構えで、広い中庭を擁しており雰囲気がいい。地元の高校生くらいの女子二人がたむろしていた。160ペソのモーレ・ポブラーノを注文。以前別の店でモーレ・ポブラーノを注文したが口に合わなかったので、別の店で食べてみて「モーレポブラーノ自体が自分に合わないのか」、「以前食べた店の味付けが自分に合わないのか」を明らかにすることを試みた。飲み物はオレンジレモネード40ペソにした。料理の説明をしてくれた女の子もまたスタイルが抜群であったが、早口のスペイン語で料理の説明をされ、もはや何を言っているかよくわからない。本人は親切なつもりなのだろうからまあ仕方ないのだけど、この世界にはスペイン語を解しない人が存在するんだよな。

さて、いざ料理がやってきた。花びらで盛り付けされた料理は大変美しい。

TAOLの料理は盛り付けが美しい

しかしながら、モーレポブラーノのソースはやはり無理だった。味噌カツの味噌に薬臭さを加えたような独特の風味で、甘いとも辛いとも形容し難い味は、どこで食べてもやはり同じようだ。入っているバナナケーキと相まって、独特の風味が強調されなかなか食べづらかった。

オレンジレモネードが大変美味しいのでそちらをゆっくり飲んでいると、近くで座っていたカップルにどこからともなく現れた毛並みの悪いネコがベタベタ擦り寄って所持品をべろべろ舐めていた。近くのカップルの女性はこの猫を「Chiquita——!(ハート)」と言って撫で回していたものの、私は猫をみるとどうもトキソプラズマの塊としか思えず、とても食事中に手を触れようとは思えない。この猫が人に擦り寄る雰囲気もなんだかなれなれしくて物乞いのようで、正直あまり気持ちのいいものではなかった。こっちに来るなよ…と祈っていたが、この汚らしい猫は突然私の膝に飛び乗ってきた。ああトキソプラズマの塊。この汚らしい阿呆がァーーッ!

冷や汗で固まっていると、先ほどの早口スペイン語の女性店員が「すみません…」といった感じで猫を鷲掴みにし、どこか別の場所に放逐していた。もーレポブラーノが自分に合わないだけで料理自体は美しかったし、この女性の応対も悪くなかったのでチップを払おうと準備していたのだけど、この一件で完全にチップを払う気が失せてしまい、値段もちょうど200ペソだったので、大変申し訳ないのだけどそのまま帰ることにした。

 

この日は宿のシャワーはちゃんとお湯が出て、快適だった。

クエツァランの滞在もあっという間、もう2日目である。明日にはメキシコシティという、カオスな大都会に向かわなければならない。