Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

ペルー・ボリビア(2) アレキパ②白く輝く町

9/20

終日アレキパ観光

Casona Solar泊

 

 起床する。標高2300mの高原にあるアレキパは、空気が乾いていることもあって朝はひんやりとした空気だ。

 アレキパにはインカ帝国の遺構のようなものはほとんどないが、サンタカタリナ修道院やカテドラルをはじめとしたスペイン植民地時代・キリスト教時代のすばらしい建築がたくさんある。本日はそれらの遺構をめぐる。時間があれば昨日ガイドに紹介してもらった観光スポットであるYanahuara公園や、アレキパの白い石の切り出されるRuta del Sillarに足を延ばすかもしれないという算段だ。

 昨日簡単に散歩し、町の様子を見つつ簡単に観光計画を立てておいた。朝7時に朝食を食べる。アレキパ観光のハイライトであるサンタカタリナ修道院は混雑するため、町並みが特に美しいことで有名なサン・ラサロ地区を散歩後、朝9時の開館すぐに入場。その後はカテドラルの博物館などを観光。昨日ガイドに紹介してもらったVictoriaというレストランで食事後、Yanahuara公園まで少し足を延ばすという計画とした。

Casona Solarの朝食は比較的簡素だ。コカの葉なども置いてあり、ペルーの高原地帯の一角に来たことを実感する。ヨーロッパ人観光客に人気の宿のようで、食堂で出会った人は私以外ヨーロッパ人だった。

ペルーで初めての朝を迎える

荷物を整理して宿の写真を撮っていると、インディヘナ風の風貌のスタッフの女性が宿を案内してくれた。あまりうまい英語とはいえないが、国の文化財となっている古い建物であること、部屋によって間取りが異なること、一部の部屋はかつて厩舎であったことなどを説明してくれた。

各居室に特徴がある

宿を出る。まだ朝が早く、気温も低いので空気が澄んでいる。昨日はくすんでいた火山も、遠くに雪を頂く姿がはっきり見えた。人通りも少なく広く感じる道を北西へ向かい、サン・ラサロ地区へ。

空気の澄んだアレキパの朝

アレキパの町並みは清潔感のある美しい白い凝灰岩でできた町並みが特徴的であるが、このサン・ラサロ地区の町並みは起伏とカーブに富んだ、小径がとてもかわいらしい地区だ。

美しいサン・ラサロ地区

まだサンタ・カタリナ修道院の開館まで少し時間があるので、回り道をしながらゆっくりと修道院へ向かった。ところどころにすばらしい風景が広がり、全く退屈しない。

 

まだ9時にはなっていなかったが門は既に空いており、開館を待つ観光客で行列ができていた。朝9時の数分前になると受付のスタッフが出勤する姿を観測。開館である。入場料は45ソル(1ソル=37円程度)とけっこうな値段がするが、内部はかなり広く充実した内容であり、その価値はある。ガイドをつけて回ることもできるようだが、自分のペースで歩くのが好きな私は一人で好きなように歩くことにした。

修道女たちにとって唯一の外界との接触の場であったという面会所を過ぎて、茶色い塗装のされた広場へ。ここからはふんわりと順路のようなものがあり、寄り道をしながらも進んでいく。

 

解説がなく、説明を読むのもそれほど好きではないので、興味の赴くまま歩いていくが、どうやらこの修道院はまるで小さな一つの村のようになっており、修道女には1つの部屋と台所が割り当てられていたらしい。解説がなく正しい理解なのかは知らないが、未だに煤の残る台所はかつての人々の質素な営みが感じられるものだ。

 

それにしても修道院というのは(日本ではキリスト教のイメージがいいのでそういう風に勘繰られることは少ないものの)外界との接触を断ってひたすら修道生活に励むというわけで、よく言えば祈りのための生活だけれども、悪く言えばこれは人々を宗教に没頭させるための装置であるわけだ。某ナントカ真理教が人里離れた上九一色村にサテ●アンなどと称する巨大な施設を作って人々を洗脳したのと、本質的には共通するものがあるのかもしれない…とかいうとキリスト教徒には激怒されるのだろうが、宗教の持つ特異な性質というものは宗教宗派問わず必ず存在するということを常に念頭に置いておいた方がいいような気がする。もちろん一つの村のような洗練されたシステムを有する修道院はとても美しく、それこそサテ●アンのようなハリボテ感など皆無ではあり、そこは大きな違いである。

 

天井が煤で黒くなった集団調理場と思しき場所には、天井に空いた小さな穴から光が差し込み、まるで映画の舞台であるかのような幻想的かつ現実離れした雰囲気を醸し出している。

ドームの上部へ向かう階段があり、ここを登ってみる。サンタカタリナ修道院の全貌を見渡すことができる。入り組んだ小径、まるで家並みのような修道女たちの小部屋、そして聖堂。本当に一つの閉じた村のようだ。遠くには雪を頂いた火山が、美しい稜線を描いている。少し気温も上がり、空気も濁ってきた。

 

解説をほとんど読まずに回ってしまったが、まるで一つの閉じた村のような修道院の内容には圧倒された。これが数十年前まで現役であったというから驚きである。

 

さて、つぎは残念ながら閉館中のモラル邸の横を通り過ぎ、アルマス広場に面したカテドラルの博物館へ。入場料は10ソルであるが、ガイドの案内が必須であり、このガイドには簡単なツアーの終了後にチップを払う仕組みだ。ある程度人が集まってツアー開始らしく、10分ほど待ってツアーが始まった。

大聖堂前の広場にて

まずは大聖堂の内部へ。

大聖堂内のホールはこれといった特徴はないが、高い天井を有し、とても明るく開放的な雰囲気だ。簡単に写真を撮ったのち、ホールの側室にある博物館へ入る。ここの1階は写真撮影禁止だが、金や銀、宝石のちりばめられた錫杖(キリスト教用語では何というのか??)や王冠などが展示されていた。2階は写真撮影可能で、司祭や司教が羽織る意匠などが展示されている(が、残念ながらキリスト教用語にはそれほど明るくない。だれか詳しい人教えてください)。まあ、知識がない人波の感想としては、なかなか立派な衣装だなあ、という感じだ。かつてこの大聖堂が何度か地震に襲われ倒壊し、そのたびに再建されてきたらしく、古い大聖堂の写真や倒壊後の様子なども展示されていた。

 

ガイドに導かれ、教会の屋上へ登っていく。屋上にはまるで鐘楼が砂上の楼閣のように空漠とそびえており、反対方向を見ると先ほど観光したサンタカタリナ修道院をはじめとした白いアレキパの町並みが火山のふもとに広がる様子がよくわかる。

 

先ほどとは別の道を通って大聖堂のホールに降り、ガイドにチップを払って聖堂をあとにした。Googleの口コミでは結構満足感のあるツアーと書いてあったが、大聖堂の屋上から眺めるアレキパの景色は、たしかに格別だった。

 

さて、昼食まで少し時間があるのでサン・カミーロ市場を観光したのち、いったん宿に戻る。市場の周辺には警察が多く配置されていた。スリが多いのだろうか。市場に入ると、見たことのないような果物や野菜がすごい密度で陳列されており圧巻だった。ちょっとした食堂もあったがさすがに私はここで食事する勇気はない。しかしローカル感を味わいたい人には面白そうだ。

見慣れない果物やたくさんの種類のジャガイモが並ぶ

ホテルの庭で1時間ほど休憩し、英気を養ったのち例のレストランに向かう。レストランはサン・ラサロ地区の近くにあり、ホテルからはやや遠い。外観からは本当にいいレストランなのか疑問に思ったが、入ってみると小綺麗にされた開放感のある空間が広がっており、スタッフも元気そうで厨房も活気がある。

本日はアルパカ肉料理とトゥンボのジュース(どちらも初めてだ)を注文。あつあつの鉄板の上に美しい盛り付けで料理が運ばれてきた。トゥンボのジュースはまるでパッションフルーツジュースのような、元気の出る味。アルパカ肉は筋っぽさがなく結構食べやすい。おいしくいただきました。

昼食。値段もリーズナブルで、お勧めできるお店だ

美味しい食事で英気を養えたので、ふたたびサン・ラサロ地区を軽く散歩。朝とは少し違った趣の地区を通り過ぎて川を渡り、町のはずれにあるYanahuara公園までは1㎞ほど。町のはずれにあるので治安はどうかと思ったが閑静な住宅街と美しい白い町並みが続き、その心配は全くなさそうだ。

Yanahuara公園への道

Yanahuara公園に着くと、地元の子供たちや結婚式の撮影にいそしむ新郎新婦でにぎわっていた。アーチの向こうには美しい成層火山のミスティ山がきれいに見えている。

公園にて。近くにも美しい町並みが広がる

思えば日本は富士山をまるで世界で唯一の美しい山であるかのようにたたえがちだが、イランにもチリにもポルトガルアゾレス諸島にも、そしてここペルーにも美しい成層火山はある。富士山は所詮はその美しい成層火山の一つであるにすぎない。世界は広く、日本は狭いのである。公園でゆっくり時間を過ごし、もと来た道をホテルへ戻ったが、地味に中心市街から結構な距離があり、さすがに疲れてしまった。

美しい町並みが随所にみられる

夕食の時間まで、ホテルの部屋でしばし休息。

ホテルでダラダラしていると、あっという間に日が暮れてしまっていた。アルマス広場に面したスーパーで水を一本購入。600mLが1ソルと爆安だった。夕食は昨日と同じアルマス広場に面したレストラン。カマロネス(川海老)の入ったライスをチチャとともに注文。おいしいのだが昼のレストランの味を知ってしまったあとではややジャンキーな風味に感じられ、相変わらず量が多い。アルマス広場に面したレストランはたくさんあり、このレストランをリピートしたのが正解だったのか、若干疑問に思えてきてしまった。

夜のアルマス広場

日が沈んでもにぎわっているアルマス広場を離れ、ホテルへ。

アレキパはクスコやマチュピチュと比較すると日本での知名度は低いが、白い石で作られた家並みはたいへん美しく、町の雰囲気も落ち着いており、滞在の満足度はとても高かった。

明日は朝6時にホテルを出発する。朝食はボックスブレックファーストになる。8時のフライトでクスコへ向かい、インカ帝国の文化を涵養した聖なる谷をめぐりつつ、マチュピチュへ向かう。いよいよ何年も訪問を焦がれたインカ帝国の心臓部への訪問が実現するわけで、期待せずにはいられない。

おやすみなさい