Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

マダガスカル(9) サザンクロス街道② ラヌヒラ-フィアナランツァ

8時ごろ出発
ラヌヒラ→アンバラヴァウ→フィアナランツァ
アンバラヴァウにて昼食
フィアナランツァ観光
Tsara Guest House泊
 
本日は2泊したイサロ国立公園を出て、マダガスカル中部の都市フィアナランツァに向かう。
フィアナランツァは標高1200m程度の中央高地に位置する土地で、メリナ王国を築いた部族に近いべツィレウ人が住んでいる。起伏に富む町と教会や中央高地様式の伝統的な建物が織りなす景色が印象的な町だ。
朝食は昨日とほぼ同じ。ゆっくり食事を済ませて支度をし、二日お世話になったRelais de la Reineを出る。庭への扉を開けて外を歩くと、やわらかな光でイサロの荒々しい砂岩の模様が浮かび上がっていた。車に乗り込み、8時にはホテルを出発。

朝のホテル
しばらくはステップをいくが、次第に道はワインディングロードとなり、山脈をこえていく。山脈を上り切ったところからは美しい山襞と、盆地状の土地には朝霧がかかる市街地が見えている。イフシの町だ。

イフシの町が見えている
山をこえたあたりから谷間に水田が見えてくる。建物の様式も西海岸近くでよく見られる平屋からレンガを使った二階建てや三階建ての建物が増えてきた。

イフシへ下っていく
谷間に整然と作られた棚田は、中央高地の文化圏に少しずつ入りつつあることを実感させる。しばらく走るとイフシの町に到着。この町ではトゥクトゥクは自転車ではなくガソリン駆動である。この地域の方が海岸沿いよりも豊かということらしい。

イフシ
イフシを過ぎると相変わらずステップの荒涼とした景色が広がる。しばらくいくとサザンクロス街道でよく取り上げられる”Bonnet de Pape”という帽子型の岩山が現れる。花崗岩でできているそうだ。この近くで何回かフォトストップし、写真を撮った。

Bonnet de Pape
相変わらずステップのような景色に時折花崗岩の岩山が剥き出しの荒々しい山々が見える景観が続く。名前はついていないが(ついているだけで知らないだけかもしれないが)Bonnet de Papeよりも大きな存在感を放つ花崗岩の山があちこちにみられる。
二つの尖峰を持つ特徴的な山は「門番」とよばれ、西海岸地域と中央高原地域を分けるランドマークとなっているそうだ。

「門番」とよばれる山。海岸地帯と中央高地を分けるランドマーク
民族的にはここをこえるとフィアナランツァを中心として中央高地に住む民族、ベツィレウ族が住んでいるそうだ。確かにこの尖峰をこえたあたりから平屋の建物は少なくなり、明らかにレンガづくり2-3階建ての建物が優勢になってきた。文化圏が変わったことを実感する。岩山の麓にまだ水の少ない水田が広がり、放牧されたコブウシが草をはむ景色が続く。

素晴らしい景色
しばらく走るとアンバラヴァウに到着した。趣のある家々が並ぶ、雰囲気の良い町だ。
アンバラヴァウ
このアンバラヴァウにあるホテルで休憩。このホテルはたくさんの植物が植えられ、落ち着いた雰囲気。レストランと紙漉き工房が併設されている。まずは昼食をオーダーし、出来上がりを待っている間にアンタイムル紙漉き工房を簡単に見学する。レストランは内壁を青く塗られた、おしゃれな雰囲気。料理は33000アリアリのゼブ牛の牛タン料理を選択した。

 
この地域での製紙技術はアラブ地域から持ち込まれたものらしい。Avohaというマメ科の植物の樹皮を採取して乾燥させ、それを煮てほぐし、叩いて伸ばして紙にしていく。他にフランス人の観光客がおり、現地のおばさんが説明してくれた。最後に色鮮やかな押花をして天日干しし、完成。

近くにある小屋では、アンタイムル紙の販売などもされていた。

アンタイムル紙の販売もしている
レストランに戻り、しばらくすると料理が出てきた。料理はセンス良く盛り付けされており、値段相応のおいしさだが、量が多い。若干車酔いが心配になる量だ。

昼食
さて、見学が終わると、いよいよアンバラヴァウを出発。町並みは素晴らしく、できれば1日ここに滞在したいところだった。ガイドブックには大きく取り上げられておらず、事前に情報を多く仕入れることができなかったのが心残りである。アンバラヴァウは他にRum arrangéという地元のフルーツなどを漬け込んで作った酒が有名らしく、郊外では酒を販売するブティックが点在している。この近くにはワイン畑などもある。
Rum arrangéを売るブティック。近くにはワイン畑も
アンバラヴァウを出ると再びワインディングロードとなり、ぐんぐん標高を上げていく。ワインディングロードを振り返ると盆地状になった赤い土壌と点在する緑が印象的な景色だ。坂道を喘ぎながらゆっくり登るトラックにペースを下げられながら峠を上り切る。峠からはアンバラヴァウのある盆地が綺麗に見えた。峠の頂上には記念碑があるが、これは独立戦争の際に犠牲になったフランス兵のものだそうだ。

アンバラヴァウ方面を振り返る。素晴らしい景色
峠を越えると、ほぼ北に向かって一直線に伸びる谷に沿って走る。峠をこえたあたりから緑がいっそう増え、いかにも中央高地らしい景色。素晴らしく発達した棚田は圧巻で、そこで草をはむコブウシの様子はとても絵になる光景だ。

素晴らしい棚田の光景
棚田と言えば日本でも能登半島や北山村など棚田が有名な場所はあるが、日本では農業の衰退もあり、棚田全体としては消滅の道を辿っていると言わざるを得ない。もちろん耕作機械が入りにくく全て手作業にならざるを得ないため、近代化された農業では効率が悪いということもあるのだろう。ここマダガスカルの棚田は日本のそれとは比較にならないほどに圧倒的な規模だが、おそらく高い出生率とそれによる生産年齢人口の多さ、そして農業機械にほとんど頼らない伝統的な方法によって、この景観は維持されているのだろうと思われる。世界遺産になっていても何の驚きもないような素晴らしい光景だが、これがマダガスカルの日常なのだろうか。この国には素晴らしいものがあまりにも当たり前にありすぎて、その価値が逆に正しく評価されていない感じがする。


谷あいの道をほぼ一直線に北上すると、次第に家が増えてくる。フィアナランツァの一角だ。検問を通り過ぎると、すぐにフィアナランツァの市街へ。

フィアナランツァの一角が見えてきた
フィアナランツァの市街は山々の上に作られたハイタイウンと鉄道駅などがあるダウンタウンに大きく分かれ、それぞれ雰囲気も違う。まずはハイタウンから観光。元々車で市街を回る予定だったそうだが、フィアナランツァを歩いて回ることを楽しみにしていたのでガイドに伝え、ハイタウンは徒歩での観光とさせてもらった。このあたりは何もしないと私自身が旅行で大事にしているものとガイド側で考えが食い違いやすい。おそらく多くの観光客はスポット的にみどころだけおさえればそれで満足するのだろうけど、特に都市の観光では点と点の間こそが重要だ。

ハイタウンは落ち着いた家並みが印象的だ
まずは町はずれの展望台へ向かう。なだらかな上り坂では子供が手作りのローラースケートのような道具に乗って坂を駆け降りて遊んでいる。地元の人々が歩く中1キロほど歩くと展望台に出た。ここからはフィアナランツァの市街が一望のもと。展望台には絵葉書を売る子供が。「Sir! Good price!」というお決まりのセリフである。でも写真を撮るというと元気にポーズをとってくれる。

展望台からの景色
車でカテドラルのあるハイタウンの中心地に戻り、ここからは徒歩で散歩してみる。
この辺りには学校があるらしく、子供たちが元気に走り回っている。子供達からは”Tu t’appelle comment?”とか”Bonbon!”とか、相変わらず元気である。
適当に道を選んで上り坂を登っていると、対岸の山にはカテドラルや伝統的な様式のマダガスカルの家々が並ぶ、美しい景色が現れる。この町の特にハイタウンは雰囲気もよい。本当は1日とって市街観光に充てたかった感じだ(計画を立てる段階で現地会社にフィアナランツァはちゃんと時間を取って観光したいという自分の意思を伝えたところ、「フィアナランツァには見どころはありませんけど?」みたいな対応だった。しかしマダガスカルの人々の素朴な生活に触れることこそが、サザンクロス街道を訪れる理由である。どうも現地旅行会社の人自体がマダガスカルの本当の魅力に気づいてないのではないかと思わされる)。

赤茶けた町並みが美しい

車で簡単にダウンタウンを回ってみる。起伏のある町なので、道の向こうには家の並ぶ山々が見えたりして、景色が素晴らしい。ダウンタウンには市場や鉄道駅、スタジアムなどがある。鉄道駅では週に何便か海岸地帯を結ぶ旅客列車が走っており、フランス人観光客に人気らしい。

フィアナランツァ鉄道駅

 

本日の宿、Tsara Guest Houseはハイタウンの近くにある。よく手入れされた古い洋館といった感じのとても雰囲気の良い宿で、庭にはタビビトノキやサンカクヤシなど、マダガスカル固有の植物がたくさん植えられている。受付のおばさんはノリノリな感じで楽しそうだった。ウェルカムドリンクはパッションフルーツジュース。元気になる味だ。部屋は広々としており、窓からは山の斜面に発達した市街地と、谷あいにある水田の景色が印象的だった。

Tsara Guest House外観は古い洋館といった趣


夕食はゼブ牛のステーキがメイン。飲み物にはpoc-poc(ホオズキのことらしい)のRum arrangéを注文した。とても美味しいのだが、昼間の牛タン料理のせいでまだ胃がもたれており食べ切ることはできず、残してしまった。途中からレストランに来ていたフランス人の団体が、自分の後方でにぎやかに飲み会をやっていた。この地に住むフランス人だろうか。

夕食
明日はアンタナナリボまで400kmほどの距離。距離としてはアンツィラベ〜ムルンダバよりも短いものの、ワインディングロードが連続しており道も悪く、時間がかかるそうなので、朝5時には出発するとのことであった。

おやすみなさい