Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

マダガスカル(7) サザンクロス街道①トゥリアラ-イサロ

7/3

イファティ発

トゥリアラ→サカラア→イサロ国立公園へ

イサロの窓にて夕陽を眺める

Relais de la Reine泊

 

 

本日はイファティを出発、トゥリアラまでは海岸沿いの道を走る。そこから北東方向に向きを変え、いよいよ今回の旅行のハイライトの一つ、サザンクロス街道に入っていく。サザンクロス街道はアンタナナリボからトゥリアラまでの道で、総延長900kmにもなる。この道は前回のブログでも触れた通り、マダガスカルの人々の素朴な生活を間近にみることができる道であり、ダイナミックな景色の変化を見ることができる道としても知られている。さらにこの道は長大であることから一部のマニアックな観光客を除いて避けられることが多く、静かな旅が楽しめる。

7時ごろ起床し、朝食。

パンとフルーツ、そしてコーヒーとオレンジジュースというシンプルな構成だが、相変わらずフルーツがフレッシュだ。パパイヤも入っているようだがいやな臭みがなく普通に食べられる。比較的時間に余裕があるためゆっくり朝食を食べた。

朝食

 

昨日客引きの鬱陶しかった海岸では人々が漁船に乗り込み、漁の準備をしていた。この地域の船は当然木製なのだが、帆が三角形ではなく四角形なのが特徴なのだそうだ。

朝の海辺にて

朝8時半ごろにはパキポディウムの植えられた駐車場に止められた車に乗り込み、出発。30分ほどで、マダガスカル南西部の中心都市、トゥリアラに到着した。トゥリアラでは車の給油もかねて少し市街の散歩をすることになった。

トゥリアラに到着

南西部の中心都市ということもあって市場は活気がある。このあたりのトゥクトゥクはガソリンではなくてほとんどが人力車だ。ガイド曰く中央高地では多くのトゥクトゥクがガソリン駆動らしく、この辺りにも高地とそれ以外の経済格差が現れているとのこと。

バスターミナルは人でにぎわい、市場ではフルーツやナッツ、そしてフランスパンを売っていた。フランスパンは当然フランスの影響で作られるようになったのだと思うが、マダガスカルでは主食の一つとしてかなり定着しているらしい。

トゥリアラの風景

トゥリアラを出て、いよいよサザンクロス街道へ入っていく。

市街地はほどなくして終わりをむかえ、すぐにヤシの点在する林となる。目の前には丘が現れ、これを登っていく。車窓からは徒歩で水などの荷物を引いて登っていく人々の姿が見られる。丘をこえてしばらく走ると、いかにも乾燥したサバンナのような景色が広がる、開けた場所に出た。ここでしばし休憩。

あたりにはAllaudia comosaというディディエレアの一種が生息している。このA-はマダガスカル南西部にのみ分布しているらしい。逆三角形の樹形が特徴的で、ディディエレア科のご多分に漏れず鋭いとげにおおわれている。丘の向こうには海が見える。この地域は海の近くまで比較的高地が迫っており、今既に標高数百メートルのところにいるということらしい。

Allaudia comosaがみられる。鋭い棘

しばらく乾燥した広大な大地を走る。木々はまばらで、時折バオバブ「ザー」の大木がみられる。このあたりにはすでに「フニ」や「レニアラ(グランディディエリ)」は分布していない。時折集落が点在しており、海岸と同様平屋であるが、ラテライトの土壌から日干し煉瓦を得ることができるのだろう、壁は泥や煉瓦でできているものが多い。

平屋に日干し煉瓦の壁というスタイル

アンドランヴォリーの町でベレンティー保護区などがある南部方面へ向かう道を分ける。この町は交通の要衝であり、多くのタクシーブルースが停車して休憩していた。タクシーブルースのまわりでは食べ物の行商人が盛んに食べ物を売る光景がみられる。

バスターミナルで食べ物を売る女性

アンドランヴォリーを過ぎても広大なステップに時折活気のある市場の集落が点在するという光景が続く。とある集落では木を削って作った容器を用いてサトウキビを原料とした地酒を造り、ペットボトルに入れて道端で販売していた。

酒造所があった

アップダウンを繰り返しながら、少しずつ標高を上げていくのがわかる。小さな山脈をこえたところにサカラアという集落があり、ここで昼食をとることになった。

サカラアでガイドが案内してくれたレストランは、米とスープに肉料理や魚料理を1品つけるスタイル。アヒル肉が選べるということで、こちらを注文。トータル8000アリアリであった。出てきた料理は非常に美味。コストパフォーマンスの良いレストランでおすすめだ。

昼食。アヒル肉の煮込みは美味

昼食休憩を終え、サバンナの中に時折森が広がる道を行く。

時折森が広がる

この辺りにもまだ大きなバオバブ「ザー」が生息しているのがわかるが、この辺りが分布の東限であるらしく、ほどなくしてバオバブを見かけることはなくなってしまった。

バオバブ「ザー」分布も東限に近い

草原の中にあるイラカカという町はこの辺りで大きなサファイアが発見されたことによって宝石採掘夫や宝石商が集まってできた新しい町で、タイ人やインド人、パキスタン人の姿をしばしば見かける。

イラカカは宝石店が連なる。パキスタン人が多いらしい

イラカカの町を過ぎ、しばらくすると遠くにざらざらとした質感の岩塊が見えてきた。これがイサロ国立公園である。マダガスカルのグランドキャニオンなどともいわれるが、グランドキャニオンを訪れた人によればグランドキャニオンほどの迫力はないそう。しかしながらこのイサロ国立公園はまた固有の植物の宝庫でもあり、キツネザルの生息地でもある。砂岩の層理が明瞭に観察できる岩塊群は非常に興味深い。

イサロ国立公園の岩塊が現れた

岩塊群に少し分け入ったところで右手に折れ、本日の宿、Relais de la Reineに到着した。こちらはイサロ国立公園の地形をうまく活かして作ったコロニアル調やモロカン調の要素を折衷した雰囲気の落ち着いたホテル。ウェルカムドリンクとしてハイビスカスティーが出された。

Relais de la Reineに到着

フロントからコテージ風になっている部屋までは少し距離がある。よく整備された庭はイサロ国立公園で見られるサボテン類やパキポディウムなどが美しく配置されており、まるで庭園のようだ。4時半ごろに有名な「イサロの窓」に向かうので駐車場にくるように、とのことであった。部屋に荷物を置き、しばし休憩。部屋の意匠はなかなか凝っており、調度品のセンスも良く、小綺麗にまとまっている。

しばし休息

庭側の扉から庭に直接出ることができる。庭の外では見たことのない緑色の鳥の群れが戯れていた(後ほどガイドに確認したところ、マダガスカル固有のインコらしい)。ホテルの周囲を散歩してみたが、ホテルのフロントがある建物の裏手に回ってみると、イサロ国立公園の名物、パキポディウムが連なって黄色い花をつけいた。

雰囲気が素晴らしい

 

4時半に駐車場へ。すでに日は傾き、オレンジ色の光が凹凸のある岩塊に陰影を添えている。舗装された道路から右のダートに入りしばらくすると、イサロの窓に至る。

イサロの窓

しばらくすると何台か観光客を乗せた車がやってきた。フランス人とアメリカ人のようだが、フランス人は相変わらず道を外れたり、ドローンを飛ばしたりしている。なぜドローンを飛ばしてしまうのか。うるさいし景色の邪魔になるのであまり愉快ではない。アンダヴァドアカの時もそうだったが、どうもマダガスカルにおけるフランス人は自分たちは何をしても良いと思っている節があるように見受けられる。私はフランスの文化自体は結構好きだし、美的センスとかファッションとか学ぶものは多くあると思っているけれども、こういう仕草には彼らの帝国主義的・植民地主義的世界観の残穢が反映されているように思えてならない。これは非常に見下されるべき態度である。

日が没していく

イサロの窓の夕景をシャッターに収め、ホテルに戻る。

夕食のメニューは前菜、メイン、デザートいずれも選ぶことができる。メニューを決めてスタッフに伝える。美しい調度品のちりばめられた建物の写真を撮りつつ部屋に戻り、しばし休憩。夜7時から夕食であるが、食事中の7時半にはベッドメイキング(といっても天蓋を設置するだけだそうだが)が入るとのことだったので、荷物はすべてロックをかけておいた。

 

本日の夕食、メインはマダガスカルのローカル料理を選択した。ドリンクとしてはパッションフルーツジュースを注文。素朴な味わいで、前菜がヨーロピアンな感じの洗練された雰囲気であったのとは好対照である。デザートはレモンタルトを選んだが、量が多すぎて少し残してしまった。

夕食。メインディッシュ

部屋に戻り就寝。

昨日のBamboo Clubのわさわさした雰囲気とは打って変わった落ち着いた空間で、とても居心地が良い。料理もセンスが良く、英気を養える。ここに二泊というのは大正解だったと思う。明日はイサロ国立公園を1日かけてトレッキングする予定。行程の中で滝やキツネザルの生息地を訪れ、この地の自然への理解を深める。

おやすみなさい