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早朝ホテル出発し、バオバブ並木へ
キリンディ保護区
キリンディ村訪問
夕刻のバオバブ並木へ
Palissandre Cote Ouest泊
本日は早朝にバオバブ並木を訪れ、日の出を眺める。その後キリンディ保護区へ移動。キリンディ保護区でキツネザルを観察したのち夕刻のバオバブ並木へ戻り、夕日を眺めるという、なんとも牧歌的な日程である。
早朝暗いうちにホテルのフロントで朝食弁当セットを受け取る。昨日車のクラッチの調子が悪かったためドライバーのZさんはおらず、別のドライバーの車が現れた。暗い中ムルンダバの市街へ。ムルンダバの市街から北上する未舗装の道を行く。一時間ほど走っただろうか、大きなバオバブ並木が現れた。あたりはすでに少し明るくなっている。近くには集落があり、時折並木を歩く地元の人々や、大きな荷物を引いて走るトラックが行ったり来たりしている。ここで日の出を待つことになった。日本人や韓国人の団体観光客が散見される。
明るくなるにつれて観光客が増えてきて、日の出の頃には多くの観光客が並木で写真を撮っていた。中央アジア風の衣装をまとった人々の団体がいてロシア語やトルコ系言語っぽい雰囲気の言葉をしゃべっていたので、「どちらからですか?」と尋ねるとウズベキスタンからの団体客だそうだ。ついにウズベキスタンも「訪れられる側」ではなく「訪れる側」の国になったのかと思うと感慨深い。日が完全に出ると、近くの駐車場にあった車の多くは北もしくは南の方向に出発していった。我々は北進し、キリンディ保護区へ向かう。
少しずつ北進していくと、バオバブ「フニ」が多数出現。こちらは少し褐色調の樹皮と、枝が分岐する前にすぼまるボトルのような形状が特徴。またこの時期に多くの実をつけていることも特徴のようだ。ほかのブログを読むと実の中身は甘酸っぱいパウダーがついていて食べられるらしいが、今回のガイドJさんは「あまりおいしくないですよ」と言って特に食べさせようという気配を醸し出すこともなかった。この辺りはやはりガイドの裁量によって大きな違いがある。スルーガイドの旅がガイドガチャというのはこのことだ。
荒れた道をなお北進していくと、大きなバオバブのもとに発達したキリンディの集落をすぎ、東側に折れる。
落葉樹の樹林の中を20分ほど走ると、キリンディ保護区の建物が出現した。ここには珍しい動物フォッサが鎮座しており、ヨーロッパ人団体が写真を撮っていた。ひとまずここで朝食とし、朝受け取ったパンやヨーグルトを食べる。9時になると公園の係員が現れ、キツネザルの森へ探検に出発。
バオバブが点在する森の中を進む。樹皮に時折緑の模様が出現しているのがカンランの木。成長が早く材木として使われる。棘だらけの木「カラスザンショウの仲間」や、ほかの木にまとわりつくつる植物「バニラ」、そして凹凸が顕著だが丈夫なため材木として重宝される「木の王様(と呼ばれている植物)」、まるでバオバブのように幹の肥大した「ブドウの仲間」など、見ていて飽きない。
しばらくするとキツネザルの群れが現れた。ヨーロッパ人の団体客が写真を撮ったり、水をやったりしている。こちらはチャイロキツネザルの仲間。マダガスカルの比較的広い範囲で見られる。鳴き声はキツツキのような「コロコロ…」という感じで、大変に興味深い。
時折美しい鳥が出現する。鳥の名前はまったく覚えきれなかったが、ガイドが「マダガスカル鳥類フィールドガイド」という図鑑を片手に教えてくれたので、以下の写真は図鑑をお持ちの方はぜひ絵合わせしてほしい。私も今後図鑑などで鳥の名前を一応同定した。間違いがあれば訂正しますので、詳しい方は是非教えてください。
公園の職員は何かの群れを探している。どうやらベローシファカという種類の白いキツネザルを探しているようだ。30分ほど森林の中をさまよい歩くと、白い毛皮を持つキツネザルの群れが樹上に現れた。こちらは完全な樹上生活性のキツネザル。警戒心も強く、なかなか人前に現れない。木の上で写真を撮るのが極めて困難だった。
朝はかなり冷え込んだが、次第に気温がかなり高くなってきて、着込んでいたフリースを脱いだ。湿度がほとんどないため、まるで砂漠のような気候だ。
たくさんの鳥や動植物を観察したのち、職員にチップを渡し、食事。食事と言っても昨日のレストランと比較するとゼブ牛のステーキやパスタが30000アリアリとちょっと割高な感じがしたのでnoodle(20000アリアリ)を注文。
ちょうど食堂では極東アジア風の顔貌の男性が女性ガイドとともに座っていた。話してみると鳥の研究をしている中国人で、現在は米国に留学しているという。とてもきれいな英語を話す。「今回は仕事(鳥の研究)でマダガスカルを訪れましたが、今は休みを楽しんでいます」とのこと。保護区内にあるロッジに宿泊し、鳥の観察をしているそうだ。一眼レフカメラに収めたたくさんの鳥の写真を見せてくれた。「私は生物の研究をするのがとても楽しいです」だそう。最近は地域ごとに鳥類のデータを集めた図鑑アプリ(彼はコーネル大学の作っているMerlin Bird IDというアプリを教えてくれた)などもあるそうで、こういうのを活用できればさらにマダガスカルの自然に対する造詣が深まるに違いない。
時間に余裕があるので、先ほど通過したキリンディの集落を見学することにした。キリンディの集落のはずれには「ご神木」とされる巨大なバオバブがあるが、靴を脱いで入らなければならないので、外から観察するのみとした。
キリンディの集落にはまるで門番のような大きなバオバブがそびえている。集落に入っていくと、おもに木の枝や泥でできた壁で藁葺き屋根の建物が並ぶ。市場はスイカや野菜、キャッサバなどの食べ物を売っているところから携帯電話(といっても所謂スマートフォンではなく、PHSのようなものだ)を売っている店まで多種多様だ。鶏肉の手羽先に味付けをしたものを調理して売っている店などもある。住人はみないきいきしており、子供たちは「Bonjour!」とか「Bonbon!」とか「Biscuit!」などと話しかけてくる。元気さと明るさが印象的だ。
思えばアフリカと言えば小学生のころに担任であった性格の悪い教諭が、給食を残している人に向かって「アフリカでは●秒に一人子供が飢え死にしているのだから食べろ」などとご高説を垂れていたのを思い出したが、彼はいったいアフリカに行ったことがあるのだろうか。アフリカの人々の生活を垣間見たことはあるのだろうか。少なくとも食糧に飢えているというふうには全く見えない。おそらくああいう言説は、自身がアフリカに行ったことがないからこそできるものなのだろうなと思う。小学生相手なら通じる出まかせも、大人相手ではその嘘を喝破されるだけだ。
私に群がってアメを欲しがる子供たちに手を振って、集落をあとにする。アメをくれないからといって特に怒り出すこともなく、終始笑顔だった。ふたたび1時間ほど走り、今度は双子のバオバブと、愛し合うバオバブへ。
双子のバオバブはキリンディとムルンダバを結ぶメインストリート上にある。ここではパンクしたトラックが木陰で車を修理する光景が見られた。愛し合うバオバブはメインストリートから少し海岸へ向かったところに合う、絡み合ったフニである。近くにはお土産屋があり、バオバブの彫刻やバオバブの実などが売られていた。
再びバオバブ並木に戻るが、まだ午後4時にもなっていない。日没まで1時間以上の時間があり、バオバブ並木の木陰で休みながらゆっくり時間を過ごした。バオバブの木陰では犬が昼寝しており、湿地ではカモが水浴びをしていた。
夕暮れの時間になると車がわらわらと駐車場に集まってきて、夕日の沈む並木の対岸の空き地に人が集まり始めた。周りの人々を気にせずに自撮りにいそしむ米国人女性、ドローンを飛ばしまくって人々の写真に小さな汚れを加えるフランス人の若年カップル。まさに十人十色といった様相だ。私と同様個人でガイドとドライバーを雇っている高齢の日本人男性と遭遇した。北海道の出身で、16日間でマダガスカルを回るそう。ほかに韓国人の団体や若年カップルなどもいた。ドローンが邪魔だが、少し砂ぼこりの立った道をスクリーンにして太陽光が散乱する景色はまさに幻想的だった。
すっかり日が沈んでしまったところで、ホテルへ戻る。にぎわいのあるムルンダバの市街を通って、ホテルへ。日はすっかり暮れ、空を見上げると南十字星がくっきりと見えた。
本日の夕食はトマトスープにイカのグリル、そしてリンゴのタルト。相変わらずおいしい夕食である。何回か停電して真っ暗になったが机の上の照明は電池式らしくついたままで、このライトは単なる装飾のためだけでなく停電対策のためでもあるのね、と思った。
明日は未舗装の道をひたすら1日走ってマンジャへ向かう。小さい集落が点在するのみで、レストランもないそうだ。今まではマダガスカル観光としてはごく一般的な日程であったが、ようやく多くの観光客の訪れない「自分らしい」旅が始まる。