Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

マダガスカル(0) プロローグ

 

一度サブサハラアフリカの旅行をしてみたい。

以前からそれは思っていたものの、以前から憧れていたエチオピアは内戦とコロナで結局行けずじまいになってしまった。最近のエチオピアでは内戦もだいぶ落ち着き、外務省の表示も赤からオレンジになってきたようだが、未だ不安は拭えず、もう少し様子を見たい。

 

個人的には自然は大事だが自然だけで文化がないのは面白くない。サブサハラアフリカで以前から目をつけていた国はエチオピアタンザニアザンジバル、そしてマダガスカルであった。それらはどれも個性的だ。エチオピアは何度かこのブログで書いている通り紀元前のアクスム王国の時代から栄え、独自のエチオピア正教というキリスト教を信奉する。ザンジバルオマーンの海洋貿易の拠点であり、アラブ風の町並みが残る。そして、もう一つがマダガスカルである。

 

マダガスカルは日本の約2倍の面積を持つ島で、サブサハラアフリカの中では極めて特異な存在である。この国の人々はボルネオ島から海を渡って移住してきたマレー系の子孫と黒人の混血である。マレー系の人々はこの国に稲作を持ち込み、中央集権制度を持つ王国を作った。多くの文書が残っているわけではないので全てが明らかになっているわけではないが、その中でメリナ王国が台頭し、マダガスカルを征服した。その後フランスによる宗教的・物理的な侵略を受け、キリスト教の影響を受けるようになる。フランスによる植民地化、そして独立を経て今に至るようだが、詳細については割愛する。

 

マダガスカルの人々は独特の信仰を持つといわれ、統計的資料では国民の半分以上が先祖崇拝を基本とした伝統的な宗教を実践しているとされている。欧米諸国による布教という名の宗教的侵略もあってキリスト教徒も半分程度いるが、土着宗教と融合している。ヨーロッパの統計だとキリスト教徒が多めに出ているが、それは欧米人の願望が多分に含まれているのか、それとも事実なのかは私にはわからない。いずれにせよ、アステカやインカといった「文明的空白地域」の宗教が多くの場合暴力的に次々とキリスト教に上書きされていった中で、未だ伝統宗教が優位というのは非常に興味深い事実である。その辺りの実態、人々の生活、そういったものを見てみたいという興味が非常に強かった。

 

マダガスカルの魅力は当然それだけではない。マダガスカルは早いうちにインド亜大陸やアフリカ大陸と分離したため、独自の特異な生態系を有する。ムルンダバのバオバブ並木はあまりに有名だし、各種保護区や国立公園に住むキツネザルなどの珍しい動物たちがみられる。当然、マダガスカル大自然を楽しんでみたい。石灰岩が削られてできた独特の地形、ツィンギーなどもある。当然これらを観察してみたいという気持ちもある。

 

つまり、マダガスカルは、その歴史、宗教、民族、自然、そして地質学的に非常に興味深い国ということである。

 

上記を踏まえて、以下のような計画を立てた。

マダガスカルは完全個人旅行だと「タクシー・ブルース」なる移動手段を使って移動することになるが、正直マイナーなルートではどのように運行されるか情報が少なく、予定が立てづらい。今回は日本の代理店を通さずに現地旅行会社と直接連絡を取り、相談しつつ計画を練っていくスタイルを取ったが、案外代理店を通しても通さなくても大して値段は変わらないようだ。引越し業者に直接依頼するよりも引越し仲介サイトを通した方が安くなる的な感じだろうか。

日本語スルーガイドと英語スポットガイドで大して値段が変わらなかったので日本語スルーガイドを選択したが、支払いの間に大幅に円安が進み思ったより大きな支出になった。パキスタンのようにハズレを引かないことを祈るが、こればかりは私にはどうしようもない。現地旅行会社が良きガイドを引き合わせてくれることを祈るのみである。

 

day1 アンタナナリボ到着、アンタナナリボからアンツィラベへ移動。アンツィラベ泊

day2 アンツィラベ→ムルンダバ(約500km)、ムルンダバ泊

day3 ムルンダバにてバオバブ並木やキリンディ保護区へ、ムルンダバ泊

day4 ムルンダバ→マンジャ泊

day5 マンジャ→アンダヴァドアカ泊

day6 アンダヴァドアカ→イファティ泊

day7 イファティ→トゥリアラ→ラノヒラ泊

day8 イサロ国立公園、ラノヒラ泊

day9 ラノヒラ→フィアナランツォア観光、フィアナランツォア泊

day10 フィアナランツォア→アンタナナリボアンタナナリボ

day11 アンタナナリボ→帰国

 

マダガスカルといえばバオバブ並木とツィンギーという人が多そうだが、ツィンギーはムルンダバを拠点にしても2泊3日かかることから、今回はパスした。ムルンダバからアンダヴァドアカを経由してイファティまで行く道は未舗装路で秘境とも言えるアクセスの悪い場所であるが、樽型の巨大なバオバブが林立する景観が見れるそうだ。トゥリアラからフィアナランツォアを経由してアンタナナリボに至る道はサザンクロス街道を言われており、こちらもメジャーとは言えないものの、ツィンギやバオバブだけではないマダガスカルの人々の生活が見れるコースとして知られている。個人的には素朴な田舎町といった風景の広がるフィアナランツォアが以前から気になっており、ここを半日観光する余裕ができるようにした。

旅行会社には2つコースを考案してもらった。一つは上記のコース、もう一方はムルンダバ→アンダヴァドアカ→トゥリアラを経由せずにアンタナナリボから飛行機でトゥリアラに向かい、サザンクロス街道を経由するコースである。後者の方がアンタナナリボの観光に丸1日割ける上に木彫り工芸で有名なザフィマニリ村を訪問する余裕ができるが、アンダヴァドアカなんて2度と行けないだろうから、前者のコースを選択することにした。

今回も宿泊にはこだわった。こういう国だと宿の質は本当に旅全体のクオリティに影響するからである。なるべく良いサービスと快適な滞在を楽しめるよう、町の中でも良いホテルやおしゃれなブティックホテルをリクエストし、予約してもらった。フランス支配の影響もあり、ホテルはおしゃれなものが多く、それほどホテル選びには苦労しなかった。

 

サブサハラアフリカというのは一度も行ったことがない地域である。どのような文化が根付いているのか、そしてどのような風景が広がっているのか楽しみだ。