Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

マダガスカル(6) イファティへ

7/2

アンダヴァドアカ→サラリー→イファティ

Bamboo Club泊

 

起床してドアを開けるとひんやり涼しい風と波の音が聞こえてくる。さわやかで静かな朝だ。

さわやかなアンダヴァドアカの朝

本日はアンダヴァドアカから海岸沿いに未舗装道をひたすら移動し、イファティまで移動する。イファティまで百数十キロの短い行程でその間特に見どころがあるわけではないが、未舗装の道路がひたすら続き時間がかかるようだ。

朝7時半に朝食。

テラスから海を見ながらの朝食だ。湿度が0%近いため、朝はかなり気温が下がる。パンだけでなくフルーツもさまざまなものが用意されており、いずれも新鮮だ。パッションフルーツは日本で目にするような表面が赤のものではなく黄色のもの。味は日本のものより少し酸味が強いかなという感じだ。パンに蜂蜜をかけながらゆっくりと人影のないターコイズブルーの海を眺めるのは至福のひとときだった。

朝食。フルーツもパンもおいしかったです

黄金色の朝日の中、8時には荷物をまとめて出発。少し名残惜しい。

出発

海岸に沿って、サンゴ石灰岩由来と思われる白い砂の未舗装道路を南下していく。海側の右手には時折ガマの湿地帯やマングローブの林が現れ、美しい。

朝の湿地にフラミンゴの群れ

マングローブやガマが茂る

この地域特有の太いバオバブが点在する道をしばらく走ると、綺麗な樽型のバオバブ「フニ」や、綺麗な縞模様のバオバブ「グランディディエリ」が見られ、退屈しない。カナボウノキなどが優占するこの地域の森は乾季ということもあり緑はまばらで、乾いた印象。

 

小さな丘をこえ、低地に広がるコブウシの放牧地を通り過ぎ、…ということを繰り返しつつ少しずつ南下していく。時折茅葺き屋根の木造建築からなる集落が点在している。石灰岩質の砂地であるこの地域ではレンガの原料になる粘土が取れない。その代わりにカナボウノキをはじめとして真っ直ぐに加工しやすい木の枝や、湿地帯に多く自生するガマの葉は多く取れる。風通しが良いように隙間の多い枝で作った木造で藁葺き屋根の建築がこの地域において合理的な建築様式であることは推測がつく。

 

時折白砂の丘の向こうに綺麗なエメラルドグリーンの海がのぞき、時折車を止めて写真を撮らせてもらう。所謂綺麗な海というのは何度も見ているけど、ここまで緑味の強い美しい海には出会ったことがなかった。この国の自然の美しさにはしばし感動させられる。

時折タクシーブルースやトラックの行き交う道をしばらくいくと、ひらけた場所に出た。ここがサラリーの町である。ここにはフランス人の好むリゾートホテル、"Hotel Salary Bay"があるらしい。ガイドが「あちらのリゾートと地元の食堂、どちらで食事しますか?」というので、まずは値段を見て決めることにする。

サラリーの町

Hotel Salary Bayはヨーロッパ人好みのセンスが美しいホテル。白い建物とくすんだ茶色の調度品にエメラルドグリーンの海が映える。食堂にはピザ焼きの窯まで用意されている。ランチの選択肢は魚やタコのグリルなどがあるが、お値段は5万アリアリ。ローカルフードを味わうにはちょっと高い値段だ。写真だけたくさん撮らせてもらい、近所のローカルレストランへ。

Hotel Salary Bayは茶色と白、そしてターコイズの海が美しい

ローカルレストランに行ってみると、ちょうど女将さんが娘の髪を結っているところだった。残念ながら本日はおかずが尽きており、米と昨日ムルンベで食べたような豆のスープしかなく1万アリアリとのこと。昨日と比べるとちょっと割高な気もするが、他に選択肢はないのでここで食事とする。食事は1から作るので時間がかかるとのことで、少しサラリーの市街を散歩してみる。

素朴な一漁村といった雰囲気で、強い陽射しのもとゆったりとした時間が流れている。ご飯はガイドとドライバーとともに。食事自体は特に変哲もないものであったが、いい雰囲気の村で英気を養えた。食事を終え、また南下を始める。

サラリーにて

相変わらず木造で藁葺きの素朴な漁村が点在している。車からの流し撮りでなかなか写真に撮ることが困難だが、この地域の海は砂が白いこともあって特に美しく、エメラルドグリーンの海に白い砂、そして木でできた家々の素朴でくすんだ町並み、そしてそこで生活を営む地元の人々、走り回る元気な子どもたちが情緒あふれる光景を描き出す。

白砂青松(松ではないが)に映える、趣ある漁村の風景が広がる

家々自体は先進国の都会のように小綺麗ではないかもしれないが、日々の食事に困っている人々の飢えた様子もなければ、スラム街のような鬱屈した雰囲気もない。人々は礼儀正しく、車が近くを通りかかれば必ずといっていいほど手を振り、子供は車が通りかかると元気に挨拶して群がってくる。確かにスマートフォンや冷蔵庫、テレビやゲームといった最先端のデバイスとは無縁な世界であるが、そういった世界でも人々は豊かな心を持って暮らすことができること、テクノロジーは決して人を幸せにするわけではないことを教えてくれる。

 

アンダヴァドアカ自体はマダガスカルの旅先としてはかなりマイナーな地域ということもあり、この地域を旅行した日本語のブログでの記録はそれほど多いわけではないが、例外なくこの地域の漁村の簡素な家並みを見て、「いかにも貧しそう」とか、「世界⚫︎⚫︎⚫︎位の最貧国の人の厳しい生活が垣間見える」という感想が書かれていたので、この光景を実際目にして彼らはいったい何を見ていたのだろうと、考えさせられるものがあった。

次第に砂の色が赤みを帯びてくる

何個か集落をこえるうちに次第に地面が赤みを帯びてきて、海も先ほどのような澄んだ青緑色ではなくなってくすんできた。しばらくすると畑の広がる平野部に出た。涸れた川を車で渡っていく。程なくすると舗装された道路に合流し、そこから10分ほどで右側に折れ、本日のホテル、Bamboo Clubに到着した。

Salary市街に至ると、ホテルはすぐ

Bamboo Clubもまたコテージ風のホテルだが、宿泊客は欧米からの家族連れや団体客が多い。コテージは風通しが良いのはいいのだが、風通しが良過ぎて外で騒いでいる外国人の青年たちがうるさい。しかも窓には全て一応網戸がついているのだが、ブラインド状に木板が配置されたドアには網戸がついておらず蚊が入り放題だ。どうにも落ち着かない。外へ出て散歩をしようとすると、海岸にいた現地人から「漁船の様子を見ないか?」「彼女は良いマッサージ師だよ!」などとどう考えてもカネを払わなければいけない系のサービスを宣伝してきて鬱陶しい。どうやら外には私の居場所はなさそうだ。実に心休まらないホテルである。

Bamboo Clubはにぎやかで風通しが良すぎ、ビーチには客引きがいて心が休まらない

ふとマダガスカル地球の歩き方を見てみると、私がビーチリゾートに全く興味がなかったので見逃していただけで、イファティの宿に関してもいくつか記載されていた。その中には「静かにビーチの滞在を楽しめる」宿も記載されており、下調べ不足を若干後悔した。

日が暮れると海岸で騒ぐ客も客引きの現地人もいなくなり、だいぶ静かになった。

コテージから日の入りを眺める

夕食の時間になったのでレストランへ。

開放的な雰囲気のレストランで、スタッフもノリノリでアメリカンな感じの雰囲気だったが、食事自体は前菜、メイン、そしてデザートいずれも美味しかった。海が近いので海の幸が豊富に取れるということもあるのだろう。飲み物としては8000アリアリのパッションフルーツジュースを注文したが、これも酸味と甘味が素晴らしく生き返る思いがした。

夕食

風通しが良過ぎて落ち着かない滞在だが、部屋に置かれていた蚊取り線香を焚き、蚊帳を貼って寝る。

今回のマダガスカル旅行は前半のバオバブと後半のサザンクロス街道に大きく分かれるが、明日からはいよいよ日程も折り返しとなり、トゥリアラを経由してサザンクロス街道に入っていく。そしてイサロ国立公園のホテル、Relais de la Reineに2連泊し、イサロ国立公園のトレッキングに向かう。サザンクロス街道を駆け抜ける旅もまたマダガスカル旅行の中ではマイナーなものだが、農業や放牧を営むマダガスカルの人々の生活風景を間近にみることのできる街道ということで、個人的にはとても楽しみにしていた。西部の海岸とはまた異なった風景が展開されるはず。どのような風景が見られるのか楽しみである。