Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

アゾレス諸島(3) セッテ・シダーデス、ピコ島へ

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天気:晴れ(サンミゲル島)、くもり(ピコ島)

午前中:サンミゲル島観光

セッテ・シダーデス

午後:ポンタ・デルガダの空港へ

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タクシーにて宿(Casa do Mar)へ

 

Casa do Mar 泊

 

この日は朝5時半に起床した。

セッテ・シダーデス自体はポンタ・デルガダから10㎞程度のところにあり、昨日のフルナスからは比較的近い。GetYourGuideなどを見ると午前中のみとか午後のみのツアーも多く出ている。先にセッテ・シダーデスに行ってから朝食をとるべきか、朝食を摂ってからセッテ・シダーデスに行くべきかは大いに迷ったが、朝早く訪れることによるメリットが上回ると考えて、朝7時ごろに出発。宿を出るときに「たぶん10時くらいに戻ります」と宿の人に声をかけておいた。

紫陽花のすばらしいセッテ・シダーデスへの道

セッテ・シダーデスへは紫陽花のすばらしい道を少しずつ登っていく。紫陽花はアゾレス諸島の代名詞に今やなっているが、これは実は日本から導入されたもの。導入時はその旺盛な繁殖力から生態系への影響が危惧されるほどの厄介者だったという。

道を登っていくとしだいに景色が開け、空気が冷えていくのがわかる。途中で一度下車してウィンドブレーカーを着込んだ。Mirador do Pico do Carvaoからは少し雲が多いが、朝の柔らかな日差しが海に反射して島の輪郭や穏やかな山並みが美しくくっきり見えている。この標高になると気温のせいか、紫陽花もまだ完全に色鮮やかになっていないものの方が多かった。

道を登りきると少し下りに転じ、しばらくでMiradouro da Grota do Infernoへの入口。ここから1㎞ほど歩くとよくアゾレス諸島の紹介写真として使われる「あの」景色が広がる展望台に至る。残念ながらカルデラ内は朝霧におおわれており、Lagoa AzulやLagoa Verdeを見ることはできなかったので、Miradouro da Vista do Reiを訪問したのち再訪する予定とした。早朝で人はまばら。朝の澄んだ空気が素晴らしい。

左:セッテ・シダーデスへの道 右:途中にあるLagoa do Canario

カルデラ内はまだ雲に覆われていた

バイクで10分ほどでMiradouro da Vista do Reiに至る。ここには廃ホテルがあり、その近くが展望台になっている。ポンタ・デルガダ中心市街にあるバブリーで陳腐な高層マンションもそうだが、やはりどこかの時点に金儲けが自然の美しさより優先された時代もあったのだろうが、今のこの島はそうではなく、むしろ古い町並みや自然の美しさそのものを大切にしている印象である。こちらの方が観光客は集まるはずだ。日本も少しは学んでほしい姿勢ではある。閑話休題Vista do Reiから湖を眺めていると、カルデラを覆っていた霧が晴れてきて、ダイナミックで美しい景色が目の前に現れた。

左:展望台脇の廃ホテル 右:展望台でたたずむ人々

上ブロック右下に映っている方とお話ししたがアメリカから来ているそう。アメリカからは直行便があり6時間で来れるそうだ。奥さんはインディヘナ系の人だろうか。ニューヨークに住んでいるらしい。とてもいいご夫婦だった。なおこの島だけではなくアゾレス諸島全般に見られる杉もまた、日本から導入されたものらしいと教わった。

しばらく景色の変化を楽しんだのち、Miradouro da Grota do Infernoに戻る。訪れる人も少し増え始めていた。湖を覆っていた霧は完全に晴れてすばらしい晴天だが、全く雲がないとそれはそれで風情に欠けるような感じがしてしまう。まあ、ぜいたくな悩みの類である。

美しい景色を心に焼き付けて展望台をあとにするが、展望台に向かう客は明らかに増えてきた。駐車場も車が多くなってきて、バイクで道路を下るころには数珠繋ぎとまではいかないまでもかなり多くの車が上に登ってきた。朝早めに出発してここに到着したのは完全に正解だった。日差しが強い。帰りにレンタカー屋でバイクを返却して、Campo de Sao Francisco周辺にある何個かの教会をめぐり、宿に戻った。

教会はどれもそれほど大きな規模ではないが、荘厳な装飾がなされていた

宿に戻るともう朝食の10時はとうに過ぎてしまっているが、何かたべるものはないかを尋ねると宿の人は嫌な顔一つせず朝食の準備をしてくれた。本当にありがたい。ゆっくりと朝食を食べて、12時にチェックアウト。この宿は建築の美しさもさることながら、スタッフの対応、立地、すべてが素晴らしかった。高級ホテルのような格式ばった感じではなく親切さが際立っていた。素晴らしい経験ができたことを感謝したい。

さて、手配していたAerobusに乗り込み、空港へ向かう。Aerobusは一方通行で、空港に向かう時もいったん市街の方に回ってから空港に向かう経路をとる。したがってバス停も道の片側にしかないので注意が必要である。

飛行機は14:10発、ピコ島行き。

ポンタ・デルガダの空港はあらゆる島への玄関口となっている

とても小さいプロペラ機に乗り込む。屋久島などを訪れたときにプロペラ機には何度か乗ったことがあるが、ここまで小さいのは初めてだ。1時間ほど飛行機に乗っていると、きれいに晴れた空は次第に雲が多くなってきた。ピコ島が見えてくるころには空はグレーに。島の特徴的な様式を持つワイン畑が見えてくると、ほどなくピコ島に到着である。

小型プロペラ機へ乗り込む。特徴的な石垣が見えてくるとピコ島に到着

ピコ島の空港はどんよりと曇っている。空港もがらんとしていて、市街地に至る路線バスも1日2本しかなくすでに終わっていた。ということでマダレナまで15€。本日の宿、Casa do Marまで送ってくれた。

Casa do Marはマダレナの町から少し外れた海沿いのところにあり、後ろには半ば放棄されたワイン畑の石垣が迫っている。晴れると目の前には美しい海とファイアル島が広がる好立地である。主人のVictorとその奥さんStellaというドイツ人夫婦がこのペンションを経営しており、ドイツ人らしく宿泊予約の際にきわめてdescriptiveかつやや長文で宿泊の際の注意点などを事細かに教えてくれた。実際にお会いするとやはりポルトガル人のあたたかでいい意味で適当な感じとはノリが違うが、これはこれでとても親切である。この宿は比較的建ってから日が浅いというのももちろんあるのだろうが白や明るい色の木でまとめられた明るい雰囲気の建物で、とても清潔感があって居心地が良い。天気が今一つなのが玉に瑕である。

宿の主人にレンタバイクを借りれないか聞いたところPico447とPicoSportがあるようだ。夕食の時間にレストランが開店するまで時間がありそうなので、実際にマダレナの市街に足を運んでみるとPico447は日曜で休み。もう一つのPicoSportではレンタバイクの貸し出しは一応やってはいるが50㏄のみで、かつ1日40€、それにくわえて200€の保証金を預けなければならない。ちょっと高いような気がして、明日の9時15分にPico447に向かうことにして、レストランの開店時間までしばし休むことにした。

マダレナ市街の雰囲気はトラディショナルというよりは素朴な感じだ

海が近い。

遠くに潮騒が聞こえ、晴れていれば最高の立地なのだろうが、あいにくどんよりである。滞在中に晴れることを祈りたいものだな。

清潔感のあるCasa do Mar。テラスからは海とファイアル島

宿の近くに迫る畑の石垣。雲が厚い

おすすめのレストランを聞いたところ、O Ancoradouroをおすすめされた。O Petiscaもそれなりに美味しいらしいが、ここの主人が宿を建てるにあたって地元紙に悪口を掲載したらしくあまりいい印象がないらしい。どこにでもそういうことはあるんだな。Victorいわく彼は「Small man」らしい。そういうわけでO Ancoradouroに開店直後に行くことにした。この店の付近では漁業に関する宗教的な行事が行われており、スーツを着て楽器を抱えた人々などでにぎわっており、なんだか物々しい雰囲気。一体何が始まるのだろう。

19時ちょうどになり店の前に並ぶと予約の人から先に案内されたものの、予約していなかった私も入ることができた。タコのグリル(20€)と魚のスープ(7€)、そしてせっかくなのでピコ島特産の白ワイン(5€程度)を注文。魚のスープは素朴ながら出汁がきいており大変においしい。タコのグリルも素朴ながらこちらも美味。ピコ島産の白ワインは、どちらかというとフルーツ系ではなく酸味系で、キレのよさが特徴的であるようだ。

魚のスープとタコのグリルを注文。どちらもさっぱりしていておいしい

帰りにスーパーにより、飲み物を調達しつつ町を散歩してみることにした。

ピコ島を有名たらしめている特徴的な石垣をもつワイン畑は市街地にまで迫っており、この近くにはPicowinesというワイン醸造所がある。こちらではワインのテイスティングもやっているそうである。オフィス自体は8時からやっているが、試飲受付は10時からだそうで、明日の開店直後に予約する方針とした。

スーパーでは水とパッションフルーツジュースを購入。水は500mL0.5€程度で販売しておりかなり安い。スーパーでは日本ではまず見かけないフルーツや、日本ではまず見かけないほど大きさの不揃いな野菜が並んでいて、いい意味でカルチャーの違いを感じる。スーパー近くの街路樹には竜血樹の幼木などが植えられていた。

スーパーにはアゾレス諸島名産のパイナップルや謎のフルーツが

Casa do Marに戻って宿の清潔さとアットホームさにほっとしながら、本日は寝ることにした。近くで行われている先ほどの祭りの司会役の声が、日付が変わるころまで聞こえた。明日はレンタバイクで島一周の予定。晴れると良いのだが、どうだろう。