Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

アゾレス諸島(6) フローレス島②緑の島

2023/6/28

天気:曇り時々晴れ、強風

9:00 Inatel Floresにてタクシー

Miradouro Craveiro Lopez, Miradouro das Lagoasを経由し、トレッキング

 

Poço Riveira do Ferreiro

Cascata do Poço do Bacalhau

 

Aldeia da Cuada泊

 

 

本日は終日フローレス島観光の日である。

本日はまずは予約したタクシーでMiradouro das LagoasとMiradouro Craveiro Lopezをめぐる。その後一旦宿に荷物を置いてから道を戻り、尾根道のトレッキングを下ってPoço do Bacalhauの滝へ到達する計画であった。しかしながら朝起きると、風がかなり強く雲行きも怪しい。これは本当に計画通りに行動できるのか心配になってきた。

朝食では数多くのメニューがあり、その中でもオレンジを潰してジュースをその場で作る機械が置いてあったのは非常に面白かった。オレンジジュースを作って嬉々として占拠しておいたはずの窓側の自分の机に戻ると、なんだか皿がなくなっている。どういうことか首を傾げていると、欧米人夫婦が戻ってきて自分の机だという。いやカトラリーをずらして置いておいたし、そもそもグラスがなくなっていたではないかと主張すると、彼らは不満そうにすごすごと退散した。まあ確かに自分が机を占拠しているというサインがあまり明瞭でなかったのでその点においては謝罪しておいたが、随分不遜な態度だな。どうせ口うるさくて自己主張の強いクソアジア人だと思われているんだろう。どうぞお好きなようにという感じだ。ああ、朝食はとてもおいしかったです。


フローレス島のタクシー事情であるが、宿だけでなくタクシーも数が少ないので、事前に予約しておくことが推奨されているようだ。Aldeia da Cuadaを予約した際、タクシー事情について聞いたところ、「タクシーは少なくとも2日前に予約することを強くお勧めする」と言われた。彼のアドバイスに従い島のタクシードライバーにコンタクトを取ることにしたが、宿のスタッフは彼らの電話番号しか教えてくれず、わざわざ国際電話をかけて何人かのドライバーに問い合わせた。

思うに電話というのは身振り手振りで誤魔化しが効かないので、いくら英語とはいえ非常にやりづらい(やや言葉の発達が遅かったタイプの自分は日本語でも電話をまともにかけられるようになったのは社会人になってからである。それくらい電話にはいまだに苦手意識がある)。電話口で「メールアドレスの方に連絡してくれ」という人が何人かいて、そりゃまあ向こうも苦手な英語で電話などしたくないと思うが、そのアドレスを知らないから電話しているのである。

調べてみると宿の人が教えてくれた複数のドライバーのうち何人かは個人で旅行会社のようなものを経営しているっぽかったが、彼らは予定が埋まっており自分にとって都合の良い時間に送迎を行うのは無理そうだった。宿の人が予約を推奨していたのはこういうことか。仕方なく「メールアドレスの方に連絡してくれ」と言ってきたドライバーのうち一人にもう一度電話をかけ、メールアドレスを知らないからSMSでメルアドを送ってくれと頼んだ。そのアドレスで行程を細かく指定し値段を聞いて、予約をお願いすることができた次第である。

さて、Inatel Flores前で待っていると、ほぼ時刻通りにドライバーが現れた。タクシードライバー(かつ後から知ったのだがNoya toursという旅行会社の一員でもあるらしい)Luiz Freitas氏はそれなりに流暢な英語を話す。行程を確認すると、"Miradouro Lagoas Rasa e Funda"の方はどうも伝わってなかったようだが、本日は風が非常に強く雲も多いから湖が見れるかどうかはわからないよ、と言っていた。タクシーが高原状になった島の中央部に差し掛かると、確かにLagoas Rasa e Fundaがあるはずの島の南部は完全に霧の中で、これは行っても無駄であると納得。別のMiradouro das Lagoasの方は湖だけなら霧がかかっていなかったので、こちらを訪れることにした。

タクシーのドアを開けると猛烈な風。雲の流れも早く、立っているのもきついくらいだ。パノラマで写真を撮るとブレブレになって画像の端っこが黒く切れてしまった。晴れていれば素晴らしい景色が望めるらしいが、ちょっとこれは今日のトレッキングを予定通りにこなすのは厳しいかもしれない。

2つの湖。緑色の方がLagoa Negraなのが面白い

次にMiradouro Craveiro Lopezへ。この展望台は崖の上にあって、崖の下にあるFajã GrandeやFajãzinhaの集落、そしてその向こうに広がる海が見える。曇っておりあまりクリアな景色とは言えないが、それでも素晴らしい景色である。

Miradouro Craveiro Lopezからの景色。Fajazinhaの景色がよく見える

道の両縁は咲き乱れる紫陽花で縁取られており素晴らしい。

紫陽花

崖の淵につけられた道路を下り、しばらく行くとAldeia da Cuada。こちらのフロントに一旦荷物を預け、再度タクシーに乗り込む。ガイドもやっているというFreitas氏には、「一応Miradouro das Lagoasに戻ることもできるけど、今日は風が強くガスが出ていて何も見えない上に尾根道のトレッキングは危険が伴うから、有名な滝の所(Poço do Riviera do Ferreiro)からFajã Grandeに抜けるトレッキングルートを歩いた方がいいと思うよ、そちらも十分美しい」という。考えた末彼のアドバイスに従うことにした。30€払って有名な滝のところ(Poço do Riveira do Ferreiro)前の駐車場で降ろしてもらったけど、本来の距離より短くなっていたのだから少しくらい負けてくれよと思ったのはいうまでもない。まあ別にいいけど。明日宿から空港までの送迎をお願いしているので、明日もよろしくお願いしますと言って彼と別れた。

気を取り直してPoço do Riviera do Ferreiroに向かう。石畳の道だが意外と距離があり、池に着くまでに20分ほどかかる。道端には水路が流れ、緑の美しい素晴らしい道が続く。

Poço do Riviera do Ferreiroへの道は森林の中を行く

 

次第に視界が開けてくると、黒々とした水を湛えた大きな池と、その奥に緑濃い断崖絶壁から幾筋もの細い滝が流れ落ちる、まるで地球のものとは思えないような美しく、そして不思議な景観が目の前に現れた。この景色はフローレス島を象徴するものとして多くのガイドブックの表紙を飾っていたが、実際に訪れてみると滝の音とか緑の香りとか鳥の囀りとか、写真では伝わらない情報から自然の美しさを肌で感じることができる。空がどんよりしていること、そして風が強く池の水面が常に荒れているのが玉に瑕である。

なお、この断崖は西向きなので、ここを訪れるなら午後の方が崖が太陽に照らされて良いかもしれない。幸いトレッキング計画も変更して時間はたくさんあるので午後に再訪することとし、一旦先ほどの駐車場まで戻ることに。

駐車場までの帰り道ではヨーロッパ人ツアー客を引き連れた見知らぬ女性に声をかけられた。彼女はまたFreitas氏と同じNoya toursのガイドらしい。しかし自分の情報は会社内で共有されているとしても、なぜ私が一発でわかったのか少し不思議である。

 

駐車場脇の橋をこえ、トレッキングコースへ足を踏み入れた。Freitas氏曰く「わかりにくいところには白/黄色/赤の目印があるから迷うことはない」と言っており、なんのことかよくわからなかったが確かに道の分岐点には白・黄色・赤の国旗のような小さな目印が岩にペンキで描かれている。なるほど。

このトレッキングルートは崖の下縁に沿って設けられており、石垣で区画された牧場のようになっているが、このうち本当に牛がいるのはごく一部のみ。時折森の中を歩くところもあり、崖の下で風も弱いので、今日のような天気ならここを歩くのは良いかもしれない。時折崖から流れ落ちる小規模な滝が見られ、晴れた尾根道の景色のような派手さはないだろうが、これはこれで美しい景観である。

崖の下にそってトレッキングコースがあり、独特の景観

しばらく歩くと車道と合流し、この車道を下って小川をこえるとPoço do Bacalhauの滝に出た。

海へ没する断崖絶壁が印象的だ

垂直な断崖絶壁を流れ落ちる一筋の滝は美しいが、風が強過ぎて滝の下の方はあさっての方向を向いており、まるで風にはためく布のようである。こちらも崖は西向きであり景色がイマイチだったので、近くのレストランで時間を潰して再訪することにした。

Fajã Grandeには海の近くに比較的大きなレストラン、Papadiamandisがある。こちらはランチもディナーもやっていたのでちょうど開店したタイミングで入った。海に面したレストランなので、本日の激しい風で窓がガタガタと音を立てている。

アゾレスバーガーなるハンバーガーを注文し、これは10€弱であったがフライドポテトもついてかなりボリュームがあり、十分にエネルギーを摂取できた。

Papadiamandisにてアゾレスバーガー。フライドポテトは手作り感がすごい

十分に太陽が崖を照らすようになるまでのんびりと時間を潰してレストランを出た。

レストランの辺りからはフローレス島の断崖絶壁と、その断崖絶壁から流れ落ちる滝が何筋か見える。上部が平坦で周囲が切れ落ちている独特の地形、そして水が豊富でたくさんの滝が見られる光景は、やはりアゾレス諸島でもこの島ならでは。まるで隠岐諸島の断崖絶壁が島全体に見られるような雰囲気で圧巻である。

断崖絶壁とそれを流れ落ちる幾筋もの滝が圧巻

再びPoço do Bacalhauの滝を訪れると、今度は日光が崖を明るく照らしており、良い景色を望むことができた。滝壺を飾る紫陽花が美しい。

風で滝の下の方が吹き飛んでいる


Aldeia da Cuadaまでは徒歩で1km強。

Fajã Grandeの町は、規模は小さいものの道が石畳で舗装され、トラディショナルな雰囲気である。坂を登っていくと町が途切れ、小さな教会に至る。ここでどういうわけかFreitas氏のタクシーに遭遇。教会横の道を通っていくとAldeia da Cuadaまでの近道だという。ありがたくアドバイスに従うことにしてこの道を進んでみると、明るい森の中を歩く素晴らしい道。先ほどまでの強い日差しを直接浴びることもなく、とても快適である。

左:Faja Grandeの集落 右:教会横の歩道は雰囲気がよかった

しばらく歩くとほどなくしてAldeia da Cuadaの一角に出た。

Aldeia da Cuadaは元々放棄されていた伝統的な家屋が立ち並ぶ村を買い取ってコテージ風にしたもの。外装はかつてのままの趣を残して小綺麗にし、道端に花や木々を植えることでとても綺麗な村の様子を再現している。イギリスのコッツウォルズのような趣であるが、こちらの方が素朴で観光客も少なく、何より花が咲き乱れる中に溶岩を積み上げた家屋が点在する様子が大変素晴らしい。わざわざここに写真を撮りにくる観光客もいるようで、遭遇したポルトガル人の観光客は「これはまるでParadiseのようですね!!」と興奮気味にシャッターを切っていた。

 

さて、先ほど荷物を預けた建物にてチェックイン。自分のコテージに案内される。今回私が宿泊するのは、「村」の少し外れにある小さな家屋。小さいと言っても十分広い。なんとプライベートガーデン付きで、おそらく全てのコテージに対して庭が用意されているということらしい。なんとも素晴らしい話だが、今日はあいにくの強風であり、庭の芝生に寝そべって景色を楽しむなどという芸当は残念ながらできない。しばらくここで休憩ののち、再度Poço do Riviera do Ferreiroに向かうことにした。

Poço do Riviera do Ferreiroは山に近いからか、あいにくの天気でなかなか日差しが得られない。しばらくここに滞在し、一瞬の好天を待つことにした。たくさんの観光客が出入りしているが、ビニールシートを敷いて滝を眺めながら昼寝したりのんびりしたりする人も。皆様思い思いの時間を過ごしているという印象である。結局1時間ほど粘ってはみたものの残念ながら晴れ間がのぞくどころか雲は厚くなる一方で、一抹の残念さと共に美しい空間を後にした。

フローレス島の代名詞ともいえる素晴らしい景色


夕食は宿のレストランにて。

宿の近くには集落がないので、レストランは宿を予約する時に同時に予約しておいた。この日は結局レストランは満席で、ふらりとこちらのレストランに立ち寄った人は何組も追い返されていた。予約して良かったと思ったのはいうまでもない。しかしながらこちらのレストランの料理は明らかに相場の1.5倍はする。注文した魚料理はなんと1皿で27€もした。味もよく盛り付けも工夫されているのだが、この値段設定は足元を見られている感じがする。飲み物はジュースが1.5€とメニューに書いてあったのでこちらを注文したがなぜか会計時3€で計算されており、文句を言ったら1.5€で計算し直された。

美味だが、27€はいくらなんでもちょっと高い

レストランを出て自分のコテージに戻る。

しばらくするとだいぶ日が沈んできた。濃紺の夜空にオレンジ色の街灯、そして溶岩を積み上げた家屋がとても良い雰囲気を出している。風が強く、夜間モードで写真を撮ると花が動いてしまうが、それでも素晴らしい写真を収めることができた。

素晴らしい雰囲気の夜のAldeia da Cuada