Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

パタゴニア(16) レファレンス

 

今回の旅行記では新しい試みとして、旅行で出会った音楽や文献などを記録として残していきたいと思っている。といってもこのリストに含まれる文献はわずかで、大部分は音楽の羅列されたリストになると思う。

それぞれの日ごとに出会ったものをリスト化し、それに対して調べた結果をメモのように記録する。当然、興味があるものは調べたが、興味のないものはあまり調べていない。スペイン語にそれほど堪能ではないことから、このリストはおそらく多くの推測や間違いを含むことになる。もし間違いを見つけたらぜひ指摘して教えてくださると、泣いて喜びます。

 

1/28

・音楽

Nicky Jam, El Perdon

サンティアゴの街中で。

サンティアゴではクンビアではなくレゲトンを耳にすることが多かった。庶民的だがどこか優しい響きのあるクンビアと違い、レゲトンはどこか不良っぽい趣があり、実際スラムっぽい街中で耳にすることが多かった。

Soda Stereo, Juegos De Seducción

空港に向かうUberの中で。こういう1980年代の米国ポップスを真似たテイストのスペイン語曲は割と耳にするのだが、クンビアと比較すると印象に残りにくい。

 

1/30

・音楽

Ke Personaje, Adios Amor/Oye Mujer

 

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ダルカウエのマーケットにて流れていた曲。Ke personajeとは"Que personaje"を捩ったものだと思うが、これは「なんてやつだ」と訳すので合っているだろうか。アルゼンチンのクンビアグループである。

 

なお、この曲は2017年ごろにChristian Nodalというメキシコのアーティストから発表されて大ヒットした曲のクンビア・アレンジである。原曲の金管楽器アコーディオン(バンドネオン)を多用したメキシコらしいしっとりした雰囲気と比較すると、軽快でテクノ風である。

・文献

チロエ島のツアーにてラ・セレナ在住という弁護士のおばさんから伺った本のリストである。全て私は知らなかった。一部のものは有名らしいが、無教養ゆえ知らなかった。

①Jean M Auel. 1980. The Clan of the Cave Bear

私はこの本を知らないのだが、調べてみると子供向けの本らしい。スペイン語題名は"El Clan del Oso Cavernario"。インディヘナが最終氷期ベーリング海峡を渡って南北アメリカにやってきたモンゴロイドであるという点に興味を持っている、という話をしていたときにこの本が言及された。

②Ken Follett. 1989. The Pillars of the Earth

ケン・フォレットによって1989年に英国で発表された歴史小説で、邦題は「大聖堂」。スペイン語題名は"Los Pilares de la Tierra"。あらすじについては詳しく知らない。確か私が「イスラームの建築文化が好きだ」という話をしていたときに、小説の中でイスラム文化について触れた一節があった、ということでこの本の名前を出してきたのだと記憶している。

③Julia Navarro. 2013. Dispara Yo Ya Estoy Muerto

Julia Navarroによって書かれた物語。イスラエルにおけるユダヤ人の不法入植についての話だそうである。確か現在のガザによる急襲とそれに対する虐殺にも近いイスラエルの対応について話していたときに、この本の名前が挙がった。

④Katerine Araya T, Macarena Almonacid B. (年不明). Castro Memoria de Intervencion Patrimonial Iglesia San Francisco de Castro

こちらはこのおばさんが現地で購入したものを見せてくれた、カストロの木造教会の写真集。建設の経過なども詳細に書かれていたと記憶している。

 

1/31

Los Reales del Valle, Regalo Equivocado

 

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乗せていただいた警察車両の中で流れていた曲。Shazamするために携帯を音源に近づけると警察の人は音量を上げてくれた。こういう寛容さというか、「外れ値的行動に対する懐の広さ」が南米の魅力の一つである。

 

このグループはランカグアというチリのサンティアゴから南におよそ100kmのところに位置する小都市を拠点とし、"Cumbia Ranchera"のバンドと書かれているが、クンビア感はあまりない。チリのクンビアを名乗るジャンルの音楽はテンポが速く、クンビア感に乏しいのが特徴のようだ。

 

Grupo Frontera &Bad Banny, un x100to

所謂クンビアの曲。

Christian Nodal, Adios Amor

 

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これはKe PersonajeのカバーしていたAdios Amorの原曲である。

 

上記2曲はプンタアレーナスの大衆食堂Lomito'sで流れていたもの。他にLos Angeles Azulesなど有名どころも流れていた。

 

Los Angeles Azules & Nicky Nicole, Otra Noche

1曲、一番気に入った曲をShazamしたがヒットせず。この曲、どうしてももう一度聴いてみたい。典型的なテンポのクンビアリズムで、変ホ長調バンドネオンの美しいハーモニーが前面に出た間奏が特徴で、確か女性ボーカルだったと思う。この食堂は有名どころの曲ばかり流していたので、おそらくこの曲もヒットソングであるはず。知ってる方いたらぜひ教えてください。→1か月ほど探し続けてようやくこの曲を発見。覚えていた通りNicky Nicoleのハスキーボイスに変ホ長調の曲だった。この曲を聴くとクレカ詐欺に衝撃を受けながらもクンビアの流れる空間で食事をしていた時の気持ちをよく思い出す。

www.youtube.com

 

2/1

Los Tigres del Norte, El Niño y La Boda

Los Tigres del Norte, El Bilingüe

Ranchera系の曲を作るメキシコのバンドらしい。マグダレナ島へ向かうボートで。

 

2/2

・音楽

Louis Fonsi, Despacito

ウシュアイアに向かうバスにて。小さな女の子が携帯から流していた。デスパシートは世界的に有名で、米国アーティストをフィーチャーしたり日本語版もあるとかないとか。口ずさみやすいメロディと裏腹に歌詞の内容は際どい。とても3−4歳の女の子が口ずさんでいい歌詞ではない。笑。

 

・文献その他

https://www.youtube.com/watch?v=LBaXgE2eRfU

こちらは現地で出会った音楽ではないが、本文中に触れる機会がなかったので備忘録的にリンクを貼っておく。2022年、最後の純血のヤーガン族の女性、クリスティナ・カルデロンさんが亡くなったというニュース。ヤーガン族とはウシュアイア周辺の先住民で、気温の低い大地でもほぼ半裸で生活していたという。今は純血のヤーガン族はいなくなってしまったが、ウシュアイアでも背の低い先住民風の人々を少なからず見かけた。

②最果ての島で馬と暮らす、南米ティエラ・デル・フエゴ

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/photo/stories/21/093000061/

こちらも現地で出会ったわけではなく、旅行後に調べていて初めて出会った記事。非常に興味深いのでこちらに残しておく。クロアチアを出て移住し、フエゴ島に住み、アルゼンチンのカウボーイ、「ガウチョ」として遊牧生活を送る人々の話。プンタアレーナスにクロアチア系移民が多いという話は聞いていたが、彼らは南米で先住民と混じり、独特の文化を形作っている。こういう視点もなかなかに興味深い。

 

2/4

Leo Mattioli, Tramposa y Mentirosa

Leo Mattioliは比較的若くして亡くなったメキシコのクンビア・アーティストらしい。メキシコ発の曲は、特にクンビアを中心にラテンアメリカ全体で聞かれている印象がある。地元のおばあさんが大音量で携帯から流しながら歩いていた。

 

2/9

Rey Ruiz, No Me Acostumbro

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2/5-8に特に音楽に出会わなかったわけではない。いくらか調べたものはあるがあまり印象に残らなかったので掲載していない。

こちらの曲はクンビアではなくサルサキューバ出身のアーティストらしい。Savoy Hotelのホールで流れていた。クンビアと比較すると、大変おしゃれな印象がある。

 

総括

南米、いやラテンアメリカというのは本当に音楽文化が豊かな地域である。トランジットで経由したヒューストンの空港やユナイテッド航空の機内で流れていた音楽と比較したのでよくわかるのだが、商業的な売れを強く意識し、確かに大衆の心にはそれなりにリーチするが強く突き刺さることがなくどこかよそよそしい響きの所謂洋楽と比較すると、ラテンアメリカの音楽はまさに人々の営為そのものであり、彼らの生活の一部という感じがする。

今一つ洗練されない部分はあるが、その分人々の心に強く訴えかけ、人々が口ずさみ踊り出したくなるような楽しさ、華やかさ、率直さがある。人々は大衆食堂やバスの中、道端だけではなく、仕事中でさえ好きな音楽を流している。もちろんそれに眉を顰める現地の人間など全く存在しない。この記録はあくまで今回のパタゴニア旅行のシーンに刻まれた個人的なものだが、ラテン音楽に興味がある人はぜひ調べて聴いてみてもらえれば幸いです。そして私にもぜひ素晴らしいアーティストや素晴らしい曲を教えてくださると、なお幸いです。