Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

パタゴニア(9) ペリトモレノ氷河

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0830頃-1700頃 ペリトモレノ氷河ツアー

氷河湖クルーズ+氷河周囲トレッキング

Hosteria Miyazato Inn泊

 

本日はペリトモレノ氷河観光ツアーに参加する。

ペリトモレノ氷河といえばアルゼンチン側パタゴニア観光の大本命といっても過言ではないくらい、有名な観光地である。氷河の上をトレッキングするツアーもあるようだが、今回はトレッキングではなく普通の氷河観光ツアーに参加することにした。

Miyazato Innの食事は比較的簡単なもので豪華さはないが、女将さんがパンケーキを焼いてくれる。落ち着いた雰囲気の食堂でゆっくりと朝食を食べる。ロビーのソファでゆっくりしていると、ピックアップのドライバーが現れた。

車に乗り込むと何組かの人を回収し、ツアーの車に合流。すでに多くの人が乗っていたが、英語を必要としているのは自分のみであとはすべてスペイン語母語とする人々らしく、一番前の席に座らされた(いや、座ることができたというべきか)。席からは走っていく道の様子がよく見える。ガイドが本日の予定について話してくれた。食事はこのツアーには含まれていないというので、旅行会社から食事の予約がしてあるという風に聞いているとWhatsAppの画面を見せたところ納得し、適切な時間にレストラン前にドロップするから心配するな、と言ってくれた。

ペリトモレノ氷河への道

アルゼンチン側パタゴニアは乾燥した大地が広がるが、これは多くの水蒸気を含んだ空気がアンデス山脈にぶつかって雨や雪を降らせ、その過程でほとんどの水蒸気を失ってしまうかららしい。バスがアンデス山脈の山々に近づくにつれて、まばらだった木々の数が増えて緑が鮮やかになっていく。そして、エルカラファテは快晴であったはずだが次第に雲が増えて空が暗くなってきた。

虹も見えた

これは関東山地季節風がぶつかる関係で冬に日本海側で雪が多く、関東地方は乾いた空気となり雪がほとんど降らないのとまさに同じ原理である。国立公園料金はすでに支払われているため、国立公園入口では入場券が配られた。アルゼンチンの激しいインフレの影響か、ガイドが膨大な札束の枚数を数えているのが印象的だった。

途中で氷河の様子が見える展望所でフォトストップとなる。ここで、ようやく美しい青白色に輝く氷河が姿を現した。写真を撮るとともに、これからさらに近づいていく氷河に期待が膨らむ。

ペリトモレノ氷河が見えてきた

ここから10分もせずに船着き場に到着した。ここで氷河湖クルーズの船に乗り込む。私の参加したツアーの客以外にも多くの人を乗せて、船は出発。

船着場

ペリトモレノ氷河はパタゴニア地方に多くある氷河のうちもっとも人里に近くアプローチが容易な氷河の一つである。氷河の名前の由来のうんちくについても語られたが詳細は忘れてしまった。たしかこの地域を探検し氷河を発見したイタリア人の名前にちなんだものと記憶している。この氷河は横幅だけで4-5kmあるという巨大な氷河で、氷の高さだけで7-8mあるという。先述の通りアンデス山脈に湿った空気がぶつかる影響で大量の降雪があるため氷河の前進する速度が速く、1日に2メートルに達するそうだ。

氷河湖は美しいエメラルドグリーン色をしているが、これは氷河が岩を削り取ってできたミネラル分がコロイドとなって沈殿せずに浮遊するために生じるもので、削り取る岩の成分、すなわち氷河の存在する部分の地質に応じて微妙に色が違うらしい。

20分ほどでクルーズ船は氷河の近くに到達し、屋外に出ることが許された。

 

氷河から出てくる冷気のせいか、船着き場よりもはるかに寒い。時折音を立てて崩れ落ちる氷塊が見えるが、大きい規模の崩壊はクルーズ中に見ることはできなかった。

なお、氷河の氷は青い色をしているが、これは降雪が重さにより圧縮されて氷になり、雪に含まれていた空気が抜けていき透明度が高くなっていく過程で赤色の光を吸収しやすくなるためだという。晴れの日よりも曇りの日の方が青が鮮やかだそうだ。

氷河の対岸にある岩に目を向けると、何本もの平行な線が岩に刻み付けられているのに気づく。これはいわゆる擦痕であり、氷河に含まれる岩石が母岩を削るためにできるものである。

擦痕も綺麗に見えた

間近で氷河を楽しんだのち、1時間ほどでクルーズ船は船着き場に戻ってきた。

ここからはペリトモレノ氷河の先端部分まで観光バスで向かう。食事の予約がされていたのはこのツアーで自分だけらしく、レストラン"Resto del Glaciar Perito Moreno"の前でドロップされ、集合時間と集合場所を告げられた。

レストランに入り名前を告げて予約を確認。予約はちゃんとされていたらしく、席に案内された。最初にスープとパンが出てきたのだが、コース料理的なものだと思っていなかったので随分簡素な料理だと思いつつこの時点でパンを間食してしまった。あとから羊肉と野菜の煮込み料理、そしてデザートまでちゃんと出てきた。レストランの窓から眺める緑の森林と青い氷河のコントラストが素晴らしい。この日見た景色の中でここからの景色が一番だったかもしれない。レストランに滞在している間は日差しが得られず、いい写真を撮れなかったのが少し心残りではあるが。

素晴らしい景色のレストラン

さて、景色の良いレストランをあとにし、集合場所へ向かいつつ簡単なトレッキングコースを歩く。今まで見たことがないタイプの美しい景色が眼前に広がっている。自分がこの場にいることが不思議な気持ちだ。もちろん氷河も素晴らしいが、トレッキングコースのまわりの森の美しさもまた素晴らしい。多くの人は氷河に心を奪われ森林など見向きもしていないのだろうが、この森林美もまた氷河の美しさを引き立てているように思われた。

 

しばらくトレッキングコースを歩くと氷河の先端がしだいに近づいてきた。よく見ると氷河の先端部で分断された氷河湖の色が左右で違っていることがわかる。これは先ほど聞いた話のように削った母岩の成分を反映したものということだろうか。氷河の巨大さの前で人々がまるで蟻のように小さく見える。

 

氷河の写真を多く撮影し満足したので、トレッキングコースの上の方にある駐車場へ向かう。ここでなんと、チロエ島ツアーで一緒だったドイツ人男性二人組に再会。なんという偶然だろう。自分を例のクレジットカード不正利用事件の第二の被害者になってしまったと自己紹介するのが大変いたたまれないが、もしサンティアゴ空港からタクシーを利用する際は気を付けるように、情報共有しておいた。せっかくなので彼らと記念写真を撮影しておいた。

集合時間の15時半までには集合場所であった駐車場に到着し、ツアーバスに乗り込む。ガイドには「(一番前の席なので)特等席で景色を楽しんでもいいし、寝てもいいよ!」と言われたので「景色を楽しみつつ寝てしまうと思います(笑)」と返答したが、帰りのバスで案の定寝てしまった。市街でピックアップ車に乗り換え、ミヤザトインに帰還。

本日は私の勘違いで昼を食べすぎてしまったためおなかがほとんどすいておらず、非常食をすこし食べるだけで済ませた。明日のパイネ国立公園ツアーに向けて、国立公園の入場料の支払いなどの準備をしておいた。

ミヤザトイン周囲は落ち着いた雰囲気