Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

パタゴニアとイグアスの滝(12) イグアスの滝

2/8

7:00より

ブラジル側・アルゼンチン側イグアス滝観光

プエルトイグアス空港へ

AR1741 2025IGR 2220EZE

着後、ブエノスアイレス市街へ

Savoy Hotel

 

本日は終日イグアスの滝を観光し、夜にブエノスアイレスへ移動する。

イグアスの滝は現在アルゼンチン側観光の目玉である悪魔の喉笛遊歩道が流されているため、十分な観光ができない。1日でアルゼンチン側とブラジル側をまとめて観光できないかと考え、少し高価だったがブラジル側・アルゼンチン側どちらも観光できる終日プライベートツアーを予約した。

朝起床し、朝食。

冷たい風が強く吹くパタゴニアの大地とは打って変わって、暖かい空気の中を鳥が囀り、とても気持ちが良い。食堂では朝食が出されたが、パン、ジュース、フルーツいずれも美味しい。特にフルーツはパタゴニアで出されたものと鮮度が全く違い、目が覚めるようなおいしさだった。主人曰く「パタゴニアはフルーツを空輸しているからね!ここの果物はとれたてだよ。」

 

ゆっくり時間を過ごしたいが迎えが来ているので、荷物をまとめてガイドの車へ。

本日のガイドはA氏、日系ブラジル人2世であり日本語を話せるガイドである。1世のご両親はブラジル移民の募集が終了する直前にブラジルへ移住。日本にいる近しい親族は叔母だけらしい。本日の予定を説明される。まずは3カ国国境へ向かい、その後ブラジル側のイグアス滝を観光。その後アルゼンチン側に移動し、昼食をとりつつアルゼンチン側を観光。オプションツアーとして130ドルでイグアス滝の滝壺へのボートツアーを提案された。ずぶ濡れになるということと正直持ち金はそれほど多くないのでやや躊躇したが、すでに旅行終盤であり今後それほどの出費予定もなく、今後そう何回も訪れられる場所ではないだろうと考え、今回は参加してみることにした。

まずは3カ国国境へ向かう。宿から車で数分のところだ。アルゼンチンの国旗が真ん中に、両サイドにパラグアイとブラジルの旗が立っている。「ブラジルの旗が小さいのが気に入らないですよねえ。」と日系ブラジル人ガイドはいう。

i guazuとはグアラニー語で「大いなる水」の意味

ここはイグアスの滝のあるイグアス川パラナ川に合流するところで、川がそのまま国境線になっている。アルゼンチンとブラジルを結ぶ橋は80年代に作られたそうだが、新たにブラジルとパラグアイを結ぶ橋が最近完成した。しかしながらまだ出入国管理ゲートの工事がまだ済んでおらず、供用は先になるらしい。

橋の手前でアルゼンチン側の国境を越え、さらに橋を越えたところでブラジルに入国。アルゼンチン側はスタンプを押されないが、ブラジル側では入国スタンプが押された。ほんのわずかな時間ではあるがブラジルへの入国を果たす。この国境橋、数ヶ月前のペソ切り下げによってアルゼンチンの物価が相対的に下落し、ブラジル側からアルゼンチン側へ買い物の車が殺到したらしい。なお、ブラジル人の彼から見てアルゼンチンの人はプライドが高いらしく、高いインフレ率で生活が苦しくてもアルゼンチン人にインフレはどうですか、と尋ねると「全然平気ですよ〜」と強がるらしい。

これはアルゼンチン側ゲート

しばしド派手な宝石などが並ぶお土産店でトイレ休憩。

ブラジル側はアルゼンチン側と比較して森林破壊が顕著であり、イグアス国立公園の領域外の土地はほとんどが農場化している。ところどころに赤土が露出しているのがわかる。しばらく走ると、国立公園の入国ゲートへ。ここでガイドがチケットを買って、入場。

 

国立公園内を走ることができるのは、路線バス以外に一部のガイドツアーの車のみ。今回はプライベートツアーなので、国立公園内に車で入場できた。往復に時間の融通が効くので個人ツアーのメリットは大きい。国立公園内に入場すると車は最高速度40kmを遵守する必要があり、GPSを渡され速度を管理される。これは公園内の生物を保護するためのもの。速度超過だとしばらく国立公園内への入域が認められなくなるそうだ。

美しい森の中を行く

高い木々に囲まれた道をゆっくり通っていく。しばらくして駐車場に到達した。

遊歩道は川沿いの崖に沿って付けられており、しばらくここを歩いていく。対岸にアルゼンチン側の滝が見える。

朝の時間はブラジル側から虹のかかる滝を拝むことができる

時折展望台が設けられた遊歩道を歩いていくと、滝の上に遊歩道がつけられている場所に到達。ネットでもよく見かける、有名な展望台の一つだ。

滝は二段になっており、遊歩道のつけられた場所はその中段にあたる。

遊歩道は水しぶきがすごく、遊歩道の先端では轟音を立てて流れ落ちる黄色を帯びた水が凄まじい。なかなか例えようのない、みたことのない景色だが、強いて例えるなら映画で見るような旧約聖書の海割れだろうか。地球のダイナミズムを感じさせる壮大な景色だ。流れ落ちる滝の水しぶきの影響で、美しい虹のかかった滝を見ることができた。虹を見るにはブラジルを午前中に観光するのがおすすめだそうだ。もはや写真の方が雄弁だろうから、コメントは少なめに。

エレベーターが設置されており、滝の上部まで登ることができる。滝壺の間近まで近づくことができた。

 

ブラジル側遊歩道の散策を終え、アルゼンチン側へ向かう。ブラジルを出国し、橋を渡り、アルゼンチンに入国。

昨日夜通った道であるが、昼に通ると全く雰囲気が違う。アルゼンチン側はブラジル側と打って変わって森林がよく残っているが、思っていたほど鬱蒼とはしておらず、明るい雰囲気の森が広がっている。20分ほど走っただろうか。ゲートを過ぎ、アルゼンチン側国立公園入り口に到着した。

 

入り口を入ると小さな列車に乗り込み、国立公園の奥の方に向かう。列車は前の方が空いていたが、あまりにも前の方に行くとエンジンの熱で暑いとのことで、ガイドに導かれて一番前の車両の後方に座った。

 

気温が高く暑い。時折吹き抜ける風が救いだ。列車は目的地に到着。本当は線路はこの先の悪魔の喉笛散策コースまで伸びているのだが、悪魔の喉笛コースは昨年の洪水により流されてしまって現在は歩くことができない。

駅に到着し、散策を開始。今後滝壺ボートツアーで濡れる予定があるということで、大きな荷物は車の中に置かせてもらう。滝の上を散策するルートと下を散策するルートがあるが、まずは滝の上から散策することになった。

滝の上ルートでは、穏やかに流れる水や森林の中を歩く道で、アップダウンはほとんどなく快適な散策コース。ブラジル側のように滝の全貌は見えないが、時折連なる滝を望むことができる。歩道の終わりに近づくと水の上に付けられたコースを歩いていき爽快感があるが、日差しが容赦なく汗が滝のようだ。

 

歩道は盲端になっており、ここから引き返して歩道入口へ戻る。
時折ハナグマが姿を表す。ガイド曰く多数生息しているのでそれほど珍しいものでもないらしい。実はけっこう凶暴で引っかかれてけがをするなどの被害も報告されているようだ。穏やかな水流の中を探すと大きなナマズが見つかることがある。羽の模様が美しい蝶もたくさんいたが、写真撮影はなかなか困難で、蝶の写真は結局1枚も撮れなかった。

ナマズ(左)とハナグマ(右)

昼食はフードコートが並ぶエリアで摂る。現金をそれほど持っておらずクレカも使えないこと、暑くお腹もそれほど空いていないことから、軽食屋でハンバーグと野菜のエンパナーダ、そしてリンゴジュースを選択。全部で1万ペソ程度の値段だった。暑さで汗を多くかき、喉が渇いていたためリンゴジュースのボトルはあっという間に空になった。

さて、次は下部コースを歩く。イグアス滝は二段に分かれている部分が多いが、階段状になっている部分のちょうど真ん中のバンド状のところにコースはつけられている。こちらの方が起伏に富んでおり、上から流れ落ちる水しぶきを浴びる場面が多く、滝も全体像が望めて臨場感がある。ここで二日前にパイネ国立公園ツアーで一緒だったオランダ人と遭遇。せっかくなので記念撮影した。時折展望が開け、滝壺これから乗る滝壺ボートも見えた。

このコースではイグアス滝本体だけではなく、支流にかかる小さな滝も見ることができる。小さな滝もこれはこれで趣があってよい。

支流の小さな滝。小さな、といっても大きい

 

一通り遊歩道を回り終わり、最後のアトラクション、滝壺ボートである。

ボートの待合室に行き、時間を過ごす。椅子が用意されており、さらにエアコンが効いていて大変快適であった。30分ほど携帯をいじりながらゆっくりしていると、次第に空が暗くなり大雨が降ってきた。まさにスコールである。

時間になると待合室近くの駐車場に、ボート乗り場まで連れて行ってくれるオープントラック的なものが現れた。皆突然のスコールでずぶ濡れになっている。前の時間帯の乗客が完全に降りた後、椅子に溜まった水はちゃんと掃除されていた。さて、今度は我々が滝壺ボートに乗る番である。スコールの雨脚もだいぶ弱まってきた。

滝壺ボート乗り場まではかなりの距離があり、トラックはゆっくり走る。ここでイグアス周辺の森林の説明や、今回のツアーの注意点について聞く。かなり濡れるということで、黄色い防水袋が配布されたものの、私は何も入れず靴への浸水防止のために膝掛け的に使おうと考えた。これは微妙に成功だったような気もするし失敗だったような気もする。

ガイドの説明を受けながら、船着き場へ

20分ほどで、船着場に到着する。救命胴衣を身に付けさせられ、船に乗り込む。バスを降車する時点で、ボートに向かう列のうち割と先頭に近いところを歩いていたはずだが、どうしても先頭を取りたい現地の青年どもに抜かされた。うーん大人気ない。まあ青年だしな。

船着場へ向かう

人々を乗せて、ボートは水の上を滑り出す。かなりのスピードだ。

しばらくは穏やかな水流をいくが、しばしゴルジュのような水流の激しいところも現れる。ブラジル側ボート乗り場を左手に見て進んでいくと、まずは悪魔の喉笛側の滝壺に到着した。ボートはある程度水しぶきがかからない程度のところで引き返すのだと思っていたが、船は滝の飛沫が敢えてたくさんかかる程度のところまで滝壺に突っ込んでいく。崖の上から轟音を立てて目の前に水しぶきの塊が流れ落ちるその迫力は、確かに滝壺からでしか見ることのできないものだ。

滝壺のかなり近くまで接近。だがこれは序の口だった

一旦引き返し、中洲のようになっている島を迂回し、アルゼンチン側の滝壺へ向かう。

 

次第に水流が激しくなっていき、次第に周囲が霧、いやもっと大粒の水滴に包まれる。まるで雨の中にいるようだ。夕方にスコールが降ったからか、昼間見た時よりも水流が増しており、爆音を立てて凄まじい勢いで水塊が蠢いている。なかなか写真では伝えがたい迫力だ。流れ落ちるとかそんなチャチなものでは断じてねえ、もっと凄まじいものの片鱗を(黙

ボートはこの流れの激しい滝壺に突っ込んでいく。

服は多少濡れる程度だろうと思っていたが、滝壺の直下はまるで集中豪雨のようであり、下着まであっという間に濡れて、身に付けていたウエストポーチまでびっしょりになった。限界まで写真や動画を撮り続けていたものの、もはや目を開けていることすらできず、目の前が真っ白になった。

この写真を最後に目を開けていられなくなった

どれほど時間がたっただろうか。ようやく滝壺からボートは離れ、帰路に着く。

思っていたより激しく濡れた。予想のはるか上をいく凄まじいアトラクションだった。

 

ボートを降り、オープントラックは公園入り口まで我々を送ってくれた。

国立公園の閉園が近く、入り口に人はまばらである。あまりにもずぶ濡れで、服もズボンもびっしょり。確認してみると、パスポートや現金の入っている防水であるはずのウエストポーチまで普通に浸水していた。まじか。財布や貴重品はチャック付きビニール袋に入れておいたため無事だった。正直このアトラクションはここまで濡れると予想していなかった。ガイドは私がトイレで着替え終わるまで待っていてくれた。黄色い防水袋を膝掛けがわりに使っていたおかげで靴は浸水せずに済んだのが救いだ。上から下まで全ての服を着替えた。

入道雲の見える夕暮れのイグアス国立公園入口

夕暮れのやわらかい日差しの中を、空港へ向かう。

空港では荷物の預け入れが終わるまでガイドが待っていてくれた。今回のツアーはそれなりに高くついたがイグアスの滝のブラジル側とアルゼンチン側を1日で効率よく回ることができ、プライベートなので融通も効き有意義なツアーだった。感謝申し上げ、登場ゲートへ。本日のスコールのせいか飛行機の出発が遅れ、1時間ほどの遅延となった。

 

ブエノスアイレスのエセイサ国際空港は市街からはかなり離れたところにある。事前情報で地下鉄に乗るのに必要なSUBEカードは市街で手に入りにくく、空港のキオスク(OPEN 25hrs)に大量の在庫があるという噂を聞いていたので、荷物を回収後出口を出てすぐのところにあるOPEN 25hrsに直行。SUBEカードを840ペソで手に入れた。本当に有り余るほど在庫があって驚いた。

 

空港に着いたのは22時を回っていたが、空港ではドライバーとガイドのおばさんが出迎えてくれた。ホテルへ向かう車の中でブエノスアイレス市街のマップを渡してくれ、みるべきところ、歩いて良いところや治安の悪いところ、バッグはひったくりなどありうるので前に抱えて持った方が良い、携帯のひったくりがあるので気をつけろ、などの注意点を伺った。また、朝9時前は警察が町でパトロールしていないので治安が良くないと言っていた。こんな深夜なのにありがたい。なんだかすみません。

30分ほどで夜の怪しげな家々の明かりが灯るブエノスアイレスの市街地に到達した。街中は女性が歩く姿もあるが、不良の男どもが屯しており雰囲気はあまり良くない。夜出歩くのは少なくとも避けた方がよさそうな雰囲気だ。程なくして、Savoy hotelに到着。

 

Savoy hotelアインシュタインも泊まったという歴史あるホテル。ブエノスアイレスの典型的な建築様式を踏襲しており、ロビーは妖艶な赤いシャンデリアが灯り、奥のバーホールは絢爛な装飾がなされている。チェックイン時に保証のためクレジットカードの番号が必要と言われたが、ガイドのおばさんがフロントスタッフに事情を説明してくれた。明日の17時半にホテルロビーで待ち合わせということを確認し、ようやく自室へ。時間は23時を回っていた。Savoy hotelの客室はグレーとブラック、ホワイトで統一された内装で、天井がかなり高く、格調の高さを感じさせる。

Savoy Hotelのロビー

荷物を引っ張り出す。服はびしょびしょに濡れており、しばらくビニール袋に入れておいたからか若干の生乾き臭がし始めている。洗うのも面倒だし着替えはあるので、濡れた服を絞って干すことに。

イグアスの滝とはまあありがちな有名どころの観光地だなあなどと斜に構えたことを思っていたのだが、実際に行ってみるとその規模や水量は下馬評に違わぬ迫力だったし、周囲の自然も含めて十二分に訪れる価値があった。

正直最後のボートツアーは高価だと思ったし、濡れると聞いて躊躇したし、実際思った以上に濡れてしまいポーチの中身まで全て干さなければいけない始末であったが、不思議と後悔はなかった。こういう無茶なツアーには、慎重な性格の私は人に勧められなければ決して参加しなかっただろう。自分の殻を破るには、時には自分の意に反して他者に強制されることも必要である。きっとあの時あんな無茶なことしたな、という思い出に残りそうな体験だった。参加して良かったと思う。

濡れた服を絞ってハンガーに掛けながら、そんなことを考えていた。

旅行中は朝にシャワーを浴びることが多かったが、さすがに何が入っているかわからない(?)滝の水でずぶ濡れになってしまったため、シャワーを浴びてから就寝。

明日はブエノスアイレスの市街観光である。長かった旅程も、明日で最終日。非常に感慨深い。