Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

モロッコ(1) マラケシュ①

2023/3/10

2250 TK199 HND

 ↓

3/11

0625 IST

1105 TK619 IST

1425 RAK(マラケシュ到着)

町並み散策

Riad Argan泊

 

慶事休暇を取得したわけではなくお互い夏休みを消費しているだけであるので、新婚旅行という言葉が適切なのかはわからないが、ともあれこれが相方と二人で行く初めての海外旅行である。

メキシコは行き帰りともエコノミークラスを利用しない安楽旅行であったが、今回は行き帰りどちらもエコノミークラス。しかし旅行が決まったのが遅かったためやや高価なチケットを取らざるを得ず、完全に払い損である。海外旅行に行くか行かないか・行く時期は早めに決断するに限る。

さて、今回は羽田空港利用である。羽田空港は実に3年ぶりのはずだが、どういうわけか7年前、イランへ旅立とうとしていた時の気持ちが思い出された。あの時は国際線ゲートの入り口に友人A氏と合流だった。初めて中東文化圏へ足を踏み出す不安と高揚。そうかあれから7年も経ったのか。同行した友人A氏も今年結婚式だそうである。時の流れはかくも早い。

ターキッシュエアラインのゲート

ターキッシュエアラインズのエリアには行列ができていた。オンラインチェックインを済ませていたため、早めに荷物を預けることができた。

羽田空港国際線ターミナルは残念なことにコンビニがない。飲料や食料を手に入れるのには高価な売店に行かねばならない。成田空港では空港にコンビニが普通にあったのだが、この違いは何なのだろうか。2時間ほど時間をつぶすと、ゲートへの案内放送が始まった。

ターキッシュエアラインは不思議なことに、搭乗時ビジネスクラスとエコノミークラス以上の細かい分け方(Group○○)はしない。けっこういい加減だとも思うが、そのいい加減さが心地よいとも思う。

飛行機にいざ乗り込むが、座席はとてつもなく窮屈である。ボーイング777-300ERは座席のモケットがやや分厚く古臭い感じがする上に、シートピッチがとにかく狭い。2週間ほど前にビジネスクラスで甘やかされていた自分には非常にこたえる仕打ちである。ビジネスクラスを覗いてみるとこちらも中央が3人配列でプライバシーがなく、ビジネスにしては大変いけてない。

それにしても狭く、足を進行方向と平行に伸ばすことすらできない。この狭さはカタール航空以来という感じがする。エコノミークラスでもそれなりに高いお金を払ってかなりの長時間(行きは13時間!)乗るわけだから、運賃が数万円上がってもいいのでシートピッチは新幹線の普通席程度を最小限にしてほしい。

さて、飛行機に乗り込み、機内食機内食はそれなりに美味しい。ペットボトルの水も渡され、席の貧相さに比べればサービスの質はそれなりに良い。

行きの機内食

機内食を食べると就寝となるが、狭すぎて大変寝づらかった。正直この年齢になるとモニターで映画を見たり音楽を聴いたりするのもだるいのだが、斜め前のおじいさんがひたすらドラえもんの映画をみていたのには笑ってしまった。sky mapを見てみるとロシア領土を巧妙に避けて飛行しているのが一目瞭然で、なかなか興味深かった。

まったく体の休まらない睡眠ののち、イスタンブールに到達する。到着すると通路を通って国際線乗り継ぎゲートへ。ペットボトルの飲み物は3本ほど買いためておいたのに、無慈悲にもすべて没収されてしまった。

イスタンブール空港に到着。壮大な建築

イスタンブール新空港はさながら触角が6個あるスライムのような形をしている。非常に新しく、規模も大きいが、ターミナル間の距離はそれほど遠くないように設計されており、よく考えられているなアという感じがする。一番驚くのは、到着したのは早朝であるにもかかわらず、ほとんどの店舗が開いていたこと。ほぼ絶え間なく、あらゆる世界の都市へと飛行機が出ている。この都市の多様さは圧巻で、中東やインド、ヨーロッパだけでなく、アメリカやイラン、現在絶賛西側諸国からの締め出しを喰らっているロシアにも普通に便が出ている。歩く人々も欧米人や黒人、インド人やヒジャブを被った中東の人々まで、きわめて多種多様である。トルコという国の「文明の十字路」たる所以を目の当たりにした。

空港の規模は巨大で、建築の意匠も凝っている

売店ファストフード店からなるフードコートやお洒落なカフェ、トルコの名産品や食品を売るお土産屋、ブランドショップまできわめて多種多様で、飽きることがない。125TLのやや高価だが大きなピスタチオのバクラヴァを購入し、比較的空いている2階のフードコートエリアで休憩。水は売店により値段に差があるが、安いものでは28TL程度であった。

2階で休憩。一部席にはコンセントも

マラケシュへの飛行機の搭乗案内は出発1時間前になったら表示されるとのことだったが、一度決まったように見えて3回くらいコロコロと変わり、空港が巨大なので歩行距離も大きく、すばらしいウォーキングになった。ようやくターミナルがD1に決定したようなので、ターミナルに向かう。アラブ人風の人は女性が多いが、ヒジャブを被った人からカジュアルな服装の人までかなり差異が大きい。黒人も少なからぬ数いたが、日本人はほとんどいなかった。

D1ゲート

搭乗案内は成田発と同様で相変わらず適当である。飛行機はちょうど地中海を横切る形で進み、シチリア島チュニス、アルジェの上空を通過していく。5時間程度のフライトでマラケシュへ到達。高度を下げると、マラケシュのシンボルカラーであるかわいらしいマラケシュピンクに彩られた建物が見えてきた。

マラケシュの市街が近づいてきた

ほどなくして、マラケシュの空港に到達する。

入国審査官はいい加減な感じで、紋切り型の質問を一通りしたのち、ボン!とハンコを押してモロッコに入国。実は初アフリカ上陸である。わお。相方は「ついにモロッコに来ちゃったよぉー」などとはしゃいでいた。入国審査ゲートを出ると、さっそくSIMカードを購入することにする。事前に調べていた通り、迷わずMarocTelecomのものを選んだ(他にOrangeやInwiなどがあるが、OrangeはともかくInwiはあまり評判がよくないらしい。ネットで調べると色々出てくるので参照されたい)。購入は現金のみだったためレートを気にする暇もなく近所の両替商で両替した。SIMのデータプランは20Gデータ通信のみ、もしくは15G+2時間半の無料通話、もしくは10G+5時間無料通話のプランがあったと記憶しているが、これらはいずれも200DH(20€)。メキシコでは4Gで200ペソ程度取られたことを考えると、破格の値段である。店番のお嬢様方は適当に仕事している感がにじみ出ており、ぺちゃくちゃしゃべりながら楽しそうにしていた。

ついにモロッコの空港へ

SIMカードの購入(と同時に両替)を済ませたので空港を出る。

こちらの空港もなかなか凝ったデザインがされている

待ち構えている旅行客送迎の人が多すぎて混乱するが、きょろきょろしていると肌の黒めなやせ型の男性が我々の名前の書かれた表札をもってやってきた。この人の運転するワゴン車に乗り込む。簡単な挨拶と説明を受けつつ、しばらくすると先ほど飛行機から見えたマラケシュピンクの町並みが近づいてきた。車はメディナの周りの複雑に曲がった通りを進み、メディナ内の駐車場で止まる。ポーターを呼んであるのだという。お礼に5USDを渡しておいたところ、にこっとして「Thank you」と言っていた。

ほどなくしてポーターがやってくる。身なりが汚い若者で正直心配だ。彼の運ぶキャリアの後ろを二人でついていく。駐車場より奥はメディナの通りが狭く、たくさんの人とそこを通り抜ける原付のガソリンの匂い、香辛料の匂いや革製品の匂い…いろいろなものが混じったこの香りは久しぶりに濃厚な中東文化圏の香りである。多くの人が訪れる比較的ライトな観光地だと思っていたが、この国を舐めていた。モロッコという国は、濃い。

初めて訪れたマラケシュは、その「濃さ」に圧倒された

メインストリートを逸れて、こんなの本当に覚えられるのかという雰囲気の道を数回曲がると、ようやく本日の宿、リヤド・アルガンである。ポーターにUSD1ドル分渡すが料金に不満があるようだ。2ドルよこせということか。仕方がないが、あまり釈然としない。そもそもGoogle Mapに張り付いて進めばわかりそうな場所にあるのに、勝手にポーターを呼ばれて2ドルという料金が徴収されるシステムに、最初は合点がいかずあまり愉快な気持ちにはなれなかった。

ホテルのリヤドの主であるおじさんはアラブ人で、とても感じがいい人なのだが、先述のポーターの件があるのでお茶をふるまわれても「これは本当は有料なのではないか?後でチップをせびられるのではないか?」と邪推してしまい、安心して飲むこともできなかった(後から考えればこれは杞憂であった。そのうち詳しく述べたい)。お茶を飲んだのちメディナの説明を受け、地図を渡される。メディナは迷いやすいこと、フナ広場への行き方、そしてオーナーの連絡先を教えてもらった。そののち部屋の鍵を渡され、部屋に案内された。移動の疲れと異国への緊張、そして慣れない街歩きからようやく解放され、一息ついた。

ようやくリヤドの一室に到着。荷物を置いて、ほっと一息

リヤド・アルガンは、地球の歩き方に載っていたものの中では比較的こぢんまりしたリヤドである。それほど高価ではないが、名だたる高級リヤドほどディテールには凝ってない感じがするし、広さも規模感もあまりない。その分アットホームで落ち着く雰囲気だ。部屋が手狭なのと、部屋とトイレの間に両開きのドアがあるが目隠し程度にしかなっておらず、用を足す音が部屋に響き渡るのが残念ポイントである。

リヤド・アルガンは素朴で清潔、こぢんまりした雰囲気

ロッコは日本との時差8時間であるが、経度は西経8度にある。すなわち時差9時間のロンドンよりも西側にあるので、朝は遅く、日没も遅くなる。ホテルに到着したのは15時半ごろで、荷物を置いてようやく一息ついたのは16時ごろだが、日光は依然として赤みを帯びておらず、まだギラギラしている。少し眩しいが、昼はまだまだ長いので散歩することにした。

町を行き交う人々は多くが伝統的な服に身を包んでおり、目つきは鋭く、身なりはあまり豊かではないのでこちらも身構えてしまう。物乞いと思しき人や手足の不自由な人、よくわからん言葉をブツブツ喋っている人がいる。テヘランのバザール的な物騒さがある。観光客の数はそれなりに多く、若い欧米人女性も複数人ではあるが歩いているので、そこまで心配はなさそうだ。道案内と称して好き放題案内しカネを巻き上げるタチの悪い輩がそこかしこにいるといううわさを聞いているので、心して歩くことにした。以下、町並みの写真を何枚か載せる。フナ広場には怪しげな黒人が何人かいたが、それ以外にはそれほど有害な雰囲気の人はいなかった。

ジャマル・エル・フナ広場

圧倒的に猥雑な雰囲気に初日は圧倒されたが、こうして振り返ってみると歩いたモロッコの町の中ではなかなかにきれいである。

さて、次第に日が傾いて暗くなってきたので、宿に戻りゆっくり滞在を楽しむとしよう。なにせ我々にとっては初めてのモロッコ、初めてのリヤド。小さくあまり装飾的ではないとはいえ、凝ったディテールには心躍る。

本日は長旅で疲れてレストラン探しに出る気は全く起きず、リヤドで頼めるお食事(コースで一人20€)をお願いすることにした。

コースはリヤドの人の手作り家庭料理。独特の香辛料と塩気の効いたサラダから始まり、コーンポタージュ、ケフタのタジン、そして挽肉を含んだカレーのようなものが入ったパン、焼きリンゴのデザート。いずれも少し塩辛いかもしれないが絶妙な味付けで、とてもおいしかった。振り返るとここの料理が全旅程で最もおいしかったといっても過言ではない。

おいしい夕食

部屋に帰り、シャワーを浴びるとと二人とも疲れで吸い込まれるように寝てしまった。