Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

アゾレス諸島(1) サンミゲル島①未知の離島

2023/6/22

TK199 2155HND

 

2023/6/23

0515IST (イスタンブール到着)

TK1755 0725(0800)IST 1020(1055)LIS (リスボン到着)

S40125 1410LIS 1540PDL (ポンタデルガダ到着)

ポンタデルガダ市街観光

 

Casa do Campo de São Francisco泊

 

 

 

前回モロッコに行ってからたったの3か月しかたっていないが、今回の旅行はとても楽しみにしていた。プロローグに書いたように、この大西洋に浮かぶ島々は歴史的にも地理的にも、そして地質学的にも興味深いものであったからだ。さらに2つの世界遺産、しかも自然遺産ではなく文化遺産を擁している異質な島々でもある。しかし残念ながら(いや、必ずしも残念ではないのかもしれないが)、アゾレス諸島にはごくわずかなホームページを除いて、日本語で書かれた旅行記のようなものはほとんどなかった。しかもいずれも少し記事が古く、調べてみると現状と微妙に異なるものも多かったので正確な情報収集にはやや苦労した。

結局プロローグに書いたように、日本では航空券と宿泊先をほぼ自前で手配し、最低限の移動手段を手配したうえで、あとは現地でなんとかするという余白の多い旅行計画となった。こういう計画は旅行会社に手配をお願いする旅行と比べれば現地での楽しみが多い一方で、自分で何とかしなければならない部分も多く、予定通りに事が進まない可能性もあるため結構心配事が多くなる。正直ちゃんとレンタカーやレンタバイクが手配できるのかとか、行きたいワイナリーに試飲を申し込めるのかとかいろいろハラハラしながらのスタートとなった。

 

さて、今回もまたターキッシュエアラインズである。

この航空会社の(羽田⇔イスタンブール)エコノミークラスは長距離便にもかかわらず非常にシートピッチが狭いことは前回の搭乗で確認していたので、今回は羽田⇔イスタンブール便では有料の事前座席指定を用いて、列の一番前の足が伸ばせる座席を指定した。有料というだけで皆様意外と皆様座席指定を躊躇うらしく、おかげさまでそれなりに「快適な空の旅」を楽しむことができた。正直ターキッシュエアラインズはスターアライアンスのマイルで座席がかなり取りにくいし、東京羽田便のビジネスクラスは2-3-2列で席のクオリティもかなり微妙と言わざるを得ないので、エコノミークラス+有料座席指定が一番安く快適に旅をするのによいのではないかと思わざるを得ない。もっとも一番良いのは最初からビジネスクラスに乗るとか、エミレーツJALのようなエコノミーでも十分なシートピッチの確保された航空会社の飛行機に乗る方がいいんだろうけど、今回はアゾレス諸島への便との接続が悪かったエミレーツ航空は不採択とせざるを得なかった。

また、今回は荷物をなるべく軽めにして、スーツケースも機内に持ち込んだ。リスボンで別の航空会社に乗り換えるため荷物をいったん回収する必要があるが、預入手荷物がロストしたりクレームになったりすると非常に面倒であるだけでなく旅行の継続へのモチベーションも下がることが予想されたため、なるべくそのようなリスクを避けようと思ったからである。ターキッシュエアラインズのチェックインカウンターで荷物重量を計測されたけど、8.4kgでまあ良いでしょうということになった。

足元が広いだけで13時間のフライトは全く違ったものとなる

イスタンブール空港で相変わらずの不夜城っぷりを楽しんだ後、リスボン行きの飛行機へ乗り換える。今回リスボン行きの飛行機は35分遅れとなったが無事出発。リスボン空港に到着した。全体的に明るく開放的な雰囲気。観光客でにぎわっている。

リスボンの市街地が見えてきた

リスボン空港に到着すると、いったん入国審査を経て再度別の航空会社にチェックインが必要である。乗り継ぎの3時間のうちにやるべきことは、入国審査と再度のチェックイン、そしてSIMカードの調達である。入国審査は特に何も聞かれることもなくボンとハンコを押されて通過。

リスボンの空港に到着。空港の入口付近にあるVodafoneのオフィス

SIMカードについては基本的にVodafoneのものがカバー範囲がすぐれているとのことであったので、ここのものを買うことにする。手荷物受取所の近くにある小さなオフィスは観光客で込み合っていたため空港の入口に出る。こちらで10G+通話500分つきのSIMカード20€(だったと記憶している)を購入。数年前のブログを読むと5Gで20€と書いてあるので、少しお得になった感がある。そのほかにデータのみで30Gというプランもあったが、現地で電話をかける可能性というのは案外高かったりするのでこちらはやめた。

空港入り口付近にあるVodafone

アゾレス航空にチェックイン、こちらは荷物を預けることにした。

実はこのアゾレス航空、直前になって機材変更が行われたらしく、エコノミークラスの料金しか払っていないのだがオンラインチェックインの座席指定時にどういうわけかビジネスクラスの席(しかもANAの新型と同じで、交互に座席が配置されフルフラットになる1-2-1列のタイプ!)が選択できてしまうという珍現象が発生しており、傲慢にもビジネスクラスの席をクリックしたところビジネスクラスの席が問題なく指定できてしまった。たった2時間半のフライトではあるが、すでに飛行機内で18時間近く過ごしている身としてはありがたい。機内食はおしゃれな箱に入ったサンドイッチであった。

なぜか取れてしまったビジネスクラスの席。機内食はサンドイッチ

しばらくフルフラットになる席でのんびり過ごしていると、ようやく島が見えてくる。島の大部分は雲に覆われている。これがアゾレス諸島の中核をなす島、サンミゲル島である。サンミゲル島の空港は紺色のカラーがアクセントで、離島のわりに人でにぎわっていた。掲示板を見るとアメリカやカナダ、ヨーロッパ諸国からの直行便もあるようだ。

サンミゲル島に到着

空港の様子。意外と人が多い

ゲートを出て右手にあるインフォメーションで空港から市街への出方を聞いてみる。距離は2㎞に満たないので歩いてアクセスするのも不可能ではないようだが、空港バス(Aerobus)などというものがあるようだ。やや規模の大きいタクシーといった風情で、行き帰りどちらもこのオフィスであらかじめ予約しておく必要がある。片道7€でやや高めの値段設定である。帰りは2日後の12時半に、宿の近くにある広場に来てもらうよう指定した。Aerobusは経路も独特なので、オフィス奥にある経路図の写真を撮っておくなどすることが必要かもしれない。

バスに乗って市街へ。宿はCampo de São Franciscoという広場に面した、Casa do Campo de São Franciscoである。入口がわかりにくいが、どうやらベルを押すらしい。近くにいたオッサンに話しかけてみたが、「I can't speak English.」と言って逃げられてしまった。

ベルを押してしばらくすると、歴史と重みある宿のたたずまいからは想像できないほどきさくな主人が出てきた。この宿は溶岩を使った伝統的な建築を改装したブティックホテルで、Booking.comで見つけて即予約したもの。入口はまるで教会のチャペルのように広々としており、黒い溶岩と木を基調とした意匠がすばらしい。オフィスは2階にあり、いろいろ案内してくれた。ここの建物の所有者が世界中を旅したときのコレクションが並べられており、中には扇子や、さぞ高いであろう日本製の棚みたいなものも置いてある。出されたコーヒーとケーキはとてもおいしかった。観光地図を渡されて、島の主要な観光地を案内された。また、レンタバイクを借りたい(といっても原付であるが)といったところ、奥にあるオフィスにいた別のおじさんがすぐにレンタカー屋に電話して手配してくれた。重みのあるたたずまいとは裏腹に、大変に居心地の良い宿である。

本日の宿、Casa do Campo de São Francisco

ちょっと市街を散歩してみることにする。Campo de São Franciscoという広場(公園)に面して大きな教会が2個ある。いずれも白い壁に黒い溶岩がコントラストをなし、緊張感のあるたたずまい。町並みは白壁とそれを縁取る黒い溶岩で統一されており、大変おしゃれで美しい。広場ではパイナップル売りの露店が出ていた。サンミゲル島はパイナップルの産地でもあり、地域性を感じさせる。

海沿いの一角にアメリカンでバブリーな高層マンションや商業施設がある。航空写真でみれば町全体のうちごくわずかな面積であるが、これが町並みの統一感を破壊してしまっている。土地の所有者が金目当てにこんな陳腐な施設を作ってしまったのだろうか。それともバブル時代のような時代がこの国にもあったのだろうか。これさえなければ完璧に美しく統一感のある町並みなだけに残念だ。(ブログを書いている今だから言えることではあるが、世界遺産に登録されたカラフルでにぎやかなアングラ・ド・エロイスモの町並みよりも、モノトーンで統一されたポンタ・デルガダの町並みの方がスタイリッシュで美しいと、個人的には思う。)

筆者の住む東京の近郊では最近古い町並みや趣のある商店街を破壊して大規模なタワマンと現代的な商業施設を生えさせ、ただでさえ枯渇しつつある日本の富を不動産業界に横流しする悪行が流行っているが、古いものを壊すことは簡単でも再生させるのは困難を極めるということをもう少し考えた方がいいのではないか、と思わずにはいられない。

ポンタ・デルガダの一角にある陳腐な商業施設とマンション

夕食は宿の近くにあるO PataNiscaへ。本日は以前からアゾレス諸島を調べると何度か出てきたLimpetという貝のグリルをパンでいただく。そして白ワイン。Limpetのグリルはバター焼きになっており、シンプルな味わいが大変おいしい。この出汁につけていただくパンもまた絶品である。値段はすべて合わせて20€程度。今の日本円では3000円程度ということになる。日本円の価値を暴落させてきた過去の政治や現在の中央銀行の姿勢には極めて強い疑問を持たざるを得ないが、自国通貨の価値が落ちることが何を意味するかすら国外に出てみないとわからないというのが、島国に暮らす我々の恐ろしいところである。(まあこの辺については多様な意見があるのだろうが、他人に忖度して自分の意見を表明しないことがこの国の現在直面している問題の本質の一部をなしていることはほぼ確実なので、このように私の意見を明確にしておく次第である。)

Limpetのグリルをシンプルにパンで

明日はいよいよレンタバイクを借りてフルナスの温泉地帯へのエクスカーションである。旅行の初日、早めに寝ることにした。