Le Chèvrefeuille

世界は遊覧、思い出の場所であり、われらは去りゆく者

2023

ちょっとまだ早いかもしれないが、今年のまとめの記事を書こうと思う。

 

2022年を振り返る記事は結局書くことがなかったが、昨年は本当に激動の年だった。

何事も動く時は本当に一気に動くなあということを実感する。2年前の自分に「2年後にあなた結婚してますよ」なんて言っても信じないだろう。でも人生というのはそういうものだ。結果が出始めると一気に出る。でも結果が出ない時はどれほど努力してもなかなか報われない。結局人生はその報われないところでいかに踏ん張り続け、地道に努力するかにかかっているのだろう。

 

2023年は、とりあえず仕事内容から自分に向いていないことを排除することに成功し、仕事しながらも自分の趣味を実現できるような環境をようやく手に入れた。与えられた仕事に打ち込んで老後を迎える人生もかつてはモデルライフの一つだったのだろうが、某首相がアルゼンチンも真っ青な放漫政策を続けたことの副作用か知らないが日本の衰退が顕著な近年、数十年後日本がどうなっているのかなんて想像もつかないので、とりあえず今を最大限楽しみつつ、将来どのような世間の動向であってもそこそこ動けるよう戦略的に生きていかなければいけない。つまりキリギリスのように遊びつつ、アリのように堅実であることが求めらている時代である。

 

さて、今年一年は海外旅行に始まり海外旅行に終わった一年だった。

3年ぶりに開かれた国境。コロナ禍を経て訪れていた海外は輝いていた。日本とは違う言語、日本とは違う空気、日本とは違う文化、日本とは違う気候、日本とは違う人々の人柄。全てがきらきらしていて、ああ自分はこれを求めていたのだなあ、としみじみ考えた。本当にたくさんの輝き、感動に出会った。そしてそれが今の自分の血となって流れていることを実感している。今年の海外旅行について簡単にまとめてみたい。

 

・メキシコ

ペルー〜ボリビアを陸路で国境越えという夢のような計画がペルーの暴徒化したデモにより台無しになり、その代わりにメキシコに行くことになった。最初は乗り気ではなかったのだが、これが本当に良かった。

街中を流れるクンビア。明るく気さくで優しく、それでいてどこか控えめな人びと。素晴らしく雄大な自然と偉大な歴史の遺産。それらが交錯する景色は久しぶりに、そして爽快なまでに自分の心を揺さぶった。こんな体験はイランに行った時以来である。

メキシコといえばマリアッチらしいけど、私が街中やバスの中で耳にした音楽はほとんどがクンビアで、わずかにサルサが混じった程度。クンビア・メヒカナのゆったりしたリズムはゆったりしたリズムの好きな自分にとっては最高の音楽で、すっかり虜になってしまった。

メキシコで訪れた都市の中で最も印象に残ったのは、疑いなくクエツァランである。伝統的な建物が建ち並ぶ斜面の田舎町で、自然も歴史遺産も豊富で、本当に訪れて良かったなと思う。こういう自分だけの隠れ家みたいなところを見つけるのが、海外旅行の楽しみでもある。まあ、自分が行ったところは大抵誰かが前に行ったところなので、真の意味で隠れ家なんてないんだけどね。

 

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・モロッコ

ロッコの中ではマラケシュが一番心に残っている。アンダルス文化の影響が濃厚に感じられる町並みは素晴らしかった。残念ながら人の心はそれほど素晴らしいと思わなかったが。砂漠での体験は私というよりも同行者が喜んでくれたので、それは良かったかな。メクネスで多くの観光スポットが修復中だったのが若干残念だ。そして今年マラケシュの近くで地震が起き、多くの人が犠牲になったと聞く。心よりご冥福をお祈りします。

ロッコといえばリヤドだけど、泊まったリヤドの中ではフェズのリヤド、リヤド・ノルマが本当に素晴らしかった。他の都市ももう少しお金をかけて良いリヤドに泊まっても良かったかもしれない。こちらも素晴らしい旅行であったはずだが、メキシコの印象が強烈すぎたため、やや印象が薄い。

 

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アゾレス諸島

日本ではほとんど知られていないポルトガル島嶼部であるが、ここはなかなか癒しのスポットだった。美しい自然と大航海時代以来の伝統的な町並み、そして離島というなかなか共存しにくい要素が交錯する素晴らしい観光地。特にサンミゲル島のセッテ・シダーデスの展望台から見た景色は今年出会った景色の中で最も美しかったと言っても過言ではない。目の前に花咲く紫陽花と雄大カルデラ湖、そしてそれを覆う朝霧が素晴らしかった。本当はフローレス島もそれくらい綺麗だったんだろうけど、あまり天気に恵まれなかったのが残念だ。そのほか、ピコ島でのワイン畑の景観やワインの体験も素晴らしいものだった。右側通行の海外でレンタバイクを一人で借りるのはなかなか恐ろしかったが、けっこう機動力があってさまざまなスポットを効率よく回れた。ポルトガル本土を含め全体として食事が美味しく、これも素晴らしかった。小国とはいえ先進国の一角なのでメキシコのように鮮烈な印象があったわけではないが、時折振り返るとじんわりと思い出す、和三盆のような上品さがある。

 

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南インド

圧倒的な濃密さと個性で他の追随を許さないインド。今回その地を踏ませてもらって、もちろん当たり前のように悪い体験もあったのだが、それも含めて全体の印象はプラスだった。特にKarthika Deepamという素晴らしい祭日を体験できたタンジャーヴールがすらばしかった。ブリハディーシュワラ寺院はその建築の美しさで、まさに人間の到達しうる建築文化の頂点といった感じがあり、これもなぜ日本では大して知られていないのか不思議だった。しかもこの建築のすごいところは、建築から1000年以上を経て、いまだに現役の寺院として人々の崇敬を集めているということだった。ケーララ州のヤシの木繁る美しい自然や木造建築の文化も素晴らしかった。そしてインドの文化や社会に深く根付くヒンドゥーの信仰というものの一端に触れることができて、とても有意義だったと思う。

 

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最後になるが、「海外旅行に始まり海外旅行に終わった」一年というのは今年が初めてだった。大学生時代は自分の英語力に自信がなかったから一人で海外旅行に行くなんて想像できなかった。仕事をしながら1年に4回も海外旅行に行けるなら、それこそバックパッカーなんてやる必要がない。そしてそれは私を(陰ながらではなく半分表として)支えてくれた人がいたからこそ実現したものであることであることは疑いの余地がない。これは決して当たり前ではなく、不断の努力と幸運があったからこそ成し得たもの。その幸せは正しく噛み締められなければならないし、本当に大事にしなければならないと思う。

 

さて、来年度は自分が高校時代から焦がれ続けてきたパタゴニアに加え、アフリカの中では特異な文化を持つ国の一つであるマダガスカル、そして今年流れてしまったペルー〜ボリビアの再挑戦をしたいと思っている。パタゴニアは年が明けたら詳細な計画を掲載するが、人気のアルゼンチン側だけではなくチリのいくつかの都市にも滞在し、この地域についての理解を深めたいと考えている。後者2つはまだ計画段階なので変更がありうるが、今年をこえる、という比較論的な思考ではなく、今年とは違った素晴らしい体験ができる、良い年になることを心から祈っている。そしてそれを実現する強い意志と覚悟を持って来年一年に臨みたい。